消化器内科
大腸の粘膜が炎症をおこし、びらんや潰瘍を形成する病気です。現在、患者数は増加傾向で20万人以上の患者様がいると考えられています。原因ははっきりしていませんが、腸内細菌、自己免疫反応の異常、食生活の変化が関与していると考えられています。
30歳以下で診断される方が多いですが、年齢を問わず発症します。腹痛や下痢、血便といった症状がありますが、症状がある状態を「活動期」、症状が安定している状態を「寛解期」と呼びます。この活動期と寛解期を繰り返します。良くなったり悪くなったりを繰り返します。
治ったと思っても時間がたって再発することも珍しくありません。炎症が粘膜に広範におこり続けると大腸癌が発生することもあります。治療が難しくなることもあり難病に指定されています。
潰瘍性大腸炎の診断は問診、診察に加え、血液検査、便検査、大腸カメラなどを行います。単独の検査で診断には至りません。 また、大腸カメラの際に大腸粘膜を採取し病理診断を行います。さらに感染症との鑑別は必須で、下痢の原因となる感染症がないか培養検査を実施します。
診断と同時に重症度の判定をしなくてはなりません。重症度の評価のために、症状の確認や血液検査で炎症反応や貧血の値を調べる必要があります。
炎症の活動性を評価するために従来から使われているCRPなどの血液検査もありますが症状が悪くなっても便中のカルプロテクチンや血中のロイシンリッチα2グリコプロテインという蛋白の値を測定し、経過観察を行うことがあります。
基本は薬物治療です。完治する薬はありませんが、腸管の炎症を抑えてくれる薬剤を使用します。
症状に応じて様々な薬を組み合わせて治療を行います。 症状が落ち着いているときは、過度に気にしすぎる必要はありませんがストレスや疲労をためすぎない、暴飲暴食をしないことが大事です。 症状があるときは、十分に休息し、食事に気をつける必要があります。線維の多い食事や脂肪分の多い食事、香辛料やお酒は避けてバランスの良い食事が望ましいです。 症状が落ち着いてくると薬を飲むのを忘れがちになりますが、再発させないためにも、定期的な医療機関の受診と毎日きちんと薬を飲むことが大事です。
適切な治療を行い、症状がなく寛解状態となれば通常の日常生活を送ることができます。仕事や学業自体への制限はありません。適度な運動と十分な睡眠をとり、ストレスをためない生活を送ることが大切です。
症状がある活動期では重症度に応じて食事制限が必要ですが、症状が安定した寛解期の患者さんの場合は、バランスのとれた規則正しい食生活を心がければ厳しい食事制限は必要ありません。ただし、香辛料などの刺激物、炭酸飲料、コーヒー、などの過剰な摂取は日頃から注意してください。飲酒に関しても、適量であれば寛解期は問題ないとされています。
寛解期であれば、運動制限はありません。むしろ、運動などでストレスを解消することも大事です。運動制限はありませんが、疲れを残さないようにしてください。
潰瘍性大腸炎の患者さんでも通常の妊娠、出産が可能ですが、当然ながら妊娠する場合は寛解期がよいです。妊娠中も再燃させないように治療を継続する必要があります。妊娠した時に自己判断で薬の服用をやめてしまうと、再燃ししてしまうこともあります。妊娠を考えはじめた時点で主治医に相談し、事前に十分な知識を持っておくことが大事です。 男性でも同様で内服薬によりパートナーの女性の妊娠、出産のリスクが上がることはありません。
原因が明確でないために治療方法が確立しておらず、長期の療養を必要とする病気を難病と指定されています。国が指定した難病に対して医療費を助成する制度を難病医療費助成制度といいます。 医療費の助成が受けられるかは定められた病気の診断基準と重症度分類に照らし合わせて、病気ごとに設定されています。
潰瘍性大腸炎では、重症度分類の中等症以上が対象となります。 軽症であっても長期にわたる治療が必要となる方は、「軽症高額該当」として医療費助成が受けられる場合があります。
どちらも大腸や小腸などの消化管の粘膜で、慢性的な炎症を起こす病気(炎症性腸疾患)です。潰瘍性大腸炎と診断されていた人が実はクローン病だったこともあります。潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜で炎症が起き、ひらんや潰瘍ができます。クローン病は、口腔から肛門にいたるすべての消化管で炎症や潰瘍が起こります。
初期には血便、下痢が多くみられます。粘血便といった膿が混ざった便を認めることもあります。また、腹痛を訴える方も多くいらっしゃいます。
潰瘍性大腸炎で腸管以外で一番多い合併症は関節炎です。足首や膝の関節に痛みがでます。それ以外にも口内炎や目に炎症を起こして充血したり、光がまぶしく感じたり、静脈血栓などの全身疾患を併発することがあります。
5-アミノサリチル酸製剤では、アレルギー反応が起きて下痢や腹痛を起こします。まるで、潰瘍性大腸炎が再燃したかのような症状になり、治療の判断が難しくなることもあります。 ステロイドでは骨粗しょう症、胃潰瘍、感染症、満月様顔貌、体重増加、不眠などや免疫調整薬では、感染症、血液障害などが主な副作用としてあげられます。当院では副作用の早期発見を心がけ、重篤な合併症であれば入院可能施設とも連携して対応いたします。
内科的な治療で改善が難しい時には、手術は必要になる場合もあります。手術にならないためにも定期的に状況を確認し内科治療を行う必要があります。