消化器内科
KARADA内科クリニックの副院長の末谷敬吾です。 今回は、便潜血検査(便潜血)についてお話させていただきたいと思います。
便潜血は大腸がんを早期に発見するために行われている大腸がん検診で広く使用されている方法です。大腸がんは日本で毎年15万人の人が罹患し、5万人の人が命を落としている病気です。がん死亡率の男性の2位、女性の1位の病気で今後も増えていくことが予想されている病気です。 その大腸がんを早くみつけるためにどうすれば良いか私見を含めてお話しさせていただきます。
糞便中に含まれる微量の血液の有無を調べる検査です。大腸がんなどで便に血が混じる可能性がある病気で陽性となります。大腸がん検診としてよく行われています。大腸がんを診断するためには、大腸カメラや注腸検査(造影剤をお尻からいれて腸の中をみる検査です。)といった方法もありますが、各自治体が大腸がん検診に便潜血を選択している理由は、比較的簡便に値段も抑えられた検査であるからです。
自治体が主導して行う「がん検診」の財源には限りがあります。このため、いかに安く検査を行えるかということも考えなくてはなりません。
ここで、お話ししなければならないのは検査の精度です。 便潜血を用いて大腸がんをみつけることができるのは65.8%との報告があります※。この値は、すべての大腸がんに対しての数値です。手術が必要な方や他臓器に転移してしまっていて根治手術ができない方などかなり進行した大腸がんがある人も含まれます。
細かいことをいえば、大腸壁内にとどまっているがんは52.8%、リンパ節や他の臓器へ転移しているような大きながんでも78.3%と報告されています。進行がんにもかかわらずこの診断率は、個人的にはかなり低い値だと思います。
診断率を上げるためには、便潜血では不十分と言わざるをえません。大腸の中をみる検査としては、大腸カメラ、大腸CT(CTコロノグラフィー)、大腸の注腸造影検査があります。 大腸CTや注腸造影はある程度の大きさの丈のある病変であれば診断も可能ですが、平べったい病変に関しては診断能が落ちてしまいます。
また、便が残っていると大腸ポリープなのか便なのか判断できなくなることも弱点かと思います。 そして、大腸カメラの最大のメリットはその場で診断だけでなく、治療ができるということではないでしょうか。大きすぎる病変でなければ、その場で切除が可能です。当院でも、みつけたポリープはそのまま切除させていただくことが多いです。
さて、今まで大腸がんをみつける話をしてきましたが、本当に大腸がんをみつけるだけで良いのでしょうか?大腸がんは、前がん病変(がんの原因となる病気)である大腸ポリープから大腸がんになるものがほとんどです。しかも、前がん病変である大腸ポリープは大きすぎなければ外来で比較的容易に切除が可能です。
もちろん、早期がんも内視鏡切除可能であることが多いですが、見た目上大腸カメラで切除できても、腸内にあるリンパ管や脈管に浸潤があれば追加で腸切除が必要となることもあります。やはり自分は前がん病変である良性の大腸ポリープを切除することが、体に負担もなく、入院の手間もなく済むので良いと思っています。
先ほどの報告では、大腸の前がん病変となるポリープを含めた診断率は10.4%でした。90%の人は見つけられないということになります。この結果も便潜血は不十分だと感じる一因です。 大腸カメラをお勧めする方は 大腸がんの危険因子は① 年齢② 大腸がんの家族歴③ 高カロリー摂取および肥満④ 過量のアルコールや喫煙があります。
大腸がんは40歳を境に急激に増加することが示されています。 繰り返しになりますが、大腸がんになってから見つけるよりもその前の段階である大腸ポリープで切除できるのが一番体に負担がかからないと思います。40歳が近くなった方は是非大腸カメラをご検討いただければとおもいます。
当院では積極的に大腸カメラを行っています。鎮静鎮痛剤を使用しての無痛内視鏡や、検査と同時にポリープの切除も可能です。 お気軽にご相談ください。
当院の内視鏡検査はご希望の方に対し鎮静剤を使用することで、眠っている間に受けていただけます。
経鼻内視鏡検査や、鎮静剤なしでの内視鏡検査も可能です。
専門医の資格を有する医師が診療することで、迅速な診断と、より正確な治療を提供することを心がけています。
腹痛などの症状は不安につながりますので、是非ご相談ください。
こちらをご確認ください。
※Morikawa T et al. A compari-son of the immunochemical fecal occult blood testand total colonoscopy in the asymptomatic popu-lation. Gastroenterology. 2005 Aug;129(2):422-8.