消化器内科
KARADA内科クリニックの副院長の末谷敬吾です。 叶井俊太郎氏がすい臓がんであることを公表されました。本当に大変な病気ですし、医師から病名を伝えられた時には、ご本人、ご家族様ともにとてもつらいお気持ちだったと思います。
がんであることを公表され、かつ、前向きに向き合っているという文章をみて執筆された本を是非読んでみたいと思いました。
追加の報道で、すい臓がんと診断されるまでの複数の医療機関を受診されるまで、すい臓がんであることを疑われず診断に時間がかかったという報道を拝見しました。とても残念なことだと思いますし、医師として気持ちを引き締める内容でもありました。
では、なぜすい臓がんは見つけにくいのでしょうか。それについて、私見も含めてお話しさせていただきます。
すい臓は、みぞおちから臍の間にある細長く横たわっている臓器です。胃や腸や肝臓の後ろ側にあり背中側にある臓器です。このため、すい臓に病気があると腹痛だけでなく背中が痛くなることも多いです。
当院ですい臓がんと診断した一人の方のお話です。半年前からなんとなくお腹に違和感があるとの訴えでした。半年前に胃カメラをやったものの異常なしとの結果で機能性ディスペプシア(胃に異常がないにもかかわらず不快感を感じる病気です。)と診断され、様子をみられていたようです。
しかし、症状がよくならないために当院を受診されました。診察の結果、膵腫瘍の可能性も否定できず当院で超音波内視鏡を施行しすい臓がんを認めました。半年前に検査が行われていれば、進行する前に診断できた可能性があるのではないかと思い残念でなりません。
みぞおちから臍の間に痛みがある時に行われる一般的な検査は、胃カメラと腹部エコーではないかと思います。この際、食道、胃、十二指腸は胃カメラで、肝臓やすい臓は腹部エコーで観察します。エコーは体に害がなく良い検査ですが、空気があるとより奥の臓器の観察はできません。
すい臓は前述の通り空気を含んだ胃や腸より背中側にあるために、腹部エコーですい臓を隅々まで観察することは難しいです。 CTをとることもあると思いますが造影剤を使用しないCTですい臓がんをみつけるのも難しいです。
もちろん、ある程度の大きいものや膵管(※1)や胆管(※2)の拡張などのすい臓がんに伴う随伴所見があれば話は変わりますが、そういった所見が出にくい診断しにくい難しい場所もあります。 こういう理由から、すい臓がんの診断に至るのが難しくなります。
※1:膵臓でつくられる膵液を十二指腸に流す管)
※2:肝臓から十二指腸へ胆汁をながす管
当院では、腹部症状がある方には診察のうえで必要に応じて超音波内視鏡という検査を行っています。 超音波内視鏡は胃や十二指腸といった膵臓の隣にある臓器からすい臓を観察することができます。このため、すい臓の隅々まで観察することが可能です。
また、すい臓がんは50歳から増えることがわかっています
50歳以上の方や以下のすい臓がんリスクが当てはまる方などは超音波内視鏡をお勧めします。
表1
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当院の内視鏡検査はご希望の方に対し鎮静剤を使用することで、眠っている間に受けていただけます。
経鼻内視鏡検査や、鎮静剤なしでの内視鏡検査も可能です。
すい臓がんは発見するのが難しく、進行が早く死亡率が高いことが特徴です。一般的な腹部エコーやMRIやPET/CT検査でも発見が難しいことが多く、当院では超音波内視鏡(EUS)を使うことで、胃から直接すい臓をみる先進的な検査を提供しています。
超音波内視鏡はどこでもできるという検査ではありません。大学やある程度の規模の病院でなければ、導入している施設は少ないです。これは、内視鏡を専門としている医師の中でも行える医師の少ないことが原因の一つです。 大きな病院に受診するのはやはり時間がかかります。当院はより気軽にご相談できる環境を提供したいと考えております。何かあればお気軽にご相談ください。
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