消化器内科
KARADA内科クリニック副院長の末谷敬吾です。
先日、パープルリボン運動が行われました。 パープルリボン運動は、女性への暴力の根絶の運動とすい臓がん撲滅を目標とした運動の2つの意味合いがあります。すい臓がんは、年々増加傾向にあり、死亡者数も年間4万人を超えて増加傾向にあります。自分は消化器内科医として、すい臓を専門として治療を行ったものとして、一人でも多くすい臓がんで苦しむ人を少なくしたいと思っています。
すい臓には主に2つの働きがあります。
1つは、すい液という消化液を分泌し栄養の消化に関与しています。
2つめは、インスリンやグルカゴンという血糖をコントロールするホルモンを作っています。すい臓は、胃や大腸などのうしろ側にあり、長さが20cmくらいの細長い臓器です。
すい臓がんが怖いという話は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?実際に医師がなりたくない病気というアンケートをするとすい臓がんという答えが多いと聞いたことがありますし、自分自身もそう思います。
怖い理由は、①発見が難しい。②治療が難しい。③5年生存率が低い。があると思います。それぞれについてお話ししします。
発見が難しい理由は、上記したすい臓の位置が関係しています。腹部の健診で一番行われる検査は腹部エコー(超音波)検査です。超音波は肝臓などを観察するのにはとても良い検査なのですが、超音波の波は空気を超えられないという弱点があります。簡単に言うと空気の奥のものを観察できません。
上述したように、すい臓は胃や大腸といった空気を含んだ消化管臓器の裏側にあります。その消化管に囲まれたすい臓は、体の外からの超音波ではすべての観察をすることはとても難しいのです。
すい臓がんの治療は、早期でみつかったとしても、基本的には手術になります。胃がんや大腸がんは早期で見つかれば胃カメラや大腸カメラで負担も少なく治療ができます。(最近は、胃や大腸手術の前に化学療法をやることも増えていると思います。)すい臓は残念ながら、まだ外科的な手術をせざるえません。
5年生存率とは、その病気になった人達が5年後に何%生存されているかを表す数字です。5年生存率は、それぞれの「がん」のステージごとに公表されています(ステージは、どの部位のがんでも、進行度を判断するための基準として、ステージというものがあります)。
すい臓がんの5年生存率はステージIでも50%という低さです(胃がん、大腸がんのステージIは90%を超えます)。この低さからもすい臓がんは怖い病気だと認識できるかもしれません。
すい臓がんの5年生存率をあげるにはどうすれば良いか?と聞かれれば、現時点では、やはり早期発見しかありません。ステージIのすい臓がんは50%程度と記載しましたがステージIの中でも10mm未満のすい臓がんの5年生存率は80%と明らかに上昇します。やはり、いかに早くすい臓がんを発見するかになると考えています。
すい臓を検査するには、腹部エコー(超音波)以外には、腹部造影CT、PET-CT、MRI、超音波内視鏡という検査があります。その中でも超音波内視鏡はstage1以下の小すい癌の発見率が最も高いとされ、超音波内視鏡が有用との報告されています)。
当院ではすい臓がんの早期発見を目標としており、超音波内視鏡を積極的に行っています。
超音波は実質臓器の検査には有用な検査ではあるものの空気に弱いと上述しました。超音波内視鏡はこの弱点を克服するためにすい臓の隣にある胃や十二指腸からすい臓を観察することができます。とても良い検査なのですが欠点は2つあります。1つは、普通の胃カメラよりも径が太いため、しっかり鎮静剤を使って行う必要があります。もう一つは、単純にできるところが少ないことです。この理由はできる医者が少ないためと考えます。
すい臓がんのリスクは、様々なものがあります。表①をご参照ください。
また、すい臓がんが発見される年齢は45歳ごろから増えてくる傾向にあります(図1)。
上記の45歳以上で、リスクファクターに当てはまる方はご検討いただければお思いますし、健診などで膵のう胞や膵管拡張を指摘された方は是非ともご検討いただければと思います。
当院の内視鏡検査はご希望の方に対し鎮静剤を使用することで、眠っている間に受けていただけます。
経鼻内視鏡検査や、鎮静剤なしでの内視鏡検査も可能です。
すい臓がんは発見するのが難しく、進行が早く死亡率が高いことが特徴です。一般的な腹部エコーやMRIやPET/CT検査でも発見が難しいことが多く、当院では超音波内視鏡(EUS)を使うことで、胃から直接すい臓をみる先進的な検査を提供しています。
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1)日本膵臓学会 「膵癌診療ガイドライン 2022年版」、 表①日本膵臓学会 「膵癌診療ガイドライン 2022年版」 図①国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)