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公開:2022.10.27 医療情報

HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の定期接種について

KARADA内科クリニック渋谷院長の田中です。

日本経済新聞が、2022年10月4日に9種類のヒトパピローマウィルス(以下、H P V)を予防するワクチンを来年4月以降に早い段階で定期接種することを厚生労働省が決めたと報じております。

どういうことなのか、この報道を端的に説明すると

来春以降、小学校6年から高校1年生相当の方が、自己負担額なしで9種類のヒトパピローマウィルスに対する予防を目的としたワクチンを接種することができる」というものです。

このニュースを確認された方の中には、

  • 今、HPVワクチンを打っている途中の人
  • HPVワクチン検討していた人
  • HPVワクチンについて初めて知った方

など様々な立場の方がいらっしゃり、報道を受けてそれぞれが、「さて、結局自分はどうすれば良いのだろうか?」と悩まれている方がいらっしゃるかと推察しております。

そこで、それぞれの立場の方に向けて、次なるアクションに関してコメントさせていただきます。

あくまでも報道を受けての記述ですので、実際の制度は異なる内容になる、あるいは、定期接種の対象者が制限されるor広がるという事態も起こり得ると思いますが、少しでも皆様のワクチン接種への検討の一助になればと思い、報道を元に話を進めて参ります。

この記事を読んで分かる事

  • 定期接種とは?
  • なぜこれだけの規模のニュースとして扱われているのか?
  • HPVワクチンの定期接種を検討するにあたって認知すべき事項
  • 対象者別の接種への考え方

という順で話を進めていきます。

HPVワクチンそのものに関する説明は今回のブログでは割愛し、こちらのページを参考にしてみてください。

定期接種とは?

東京都福祉保健局が定めております。感染症対策上重要度が高いと考えられる予防接種は、予防接種法に基づき、国民に対し予防接種を受けることが勧められ、行政の費用負担によって予防接種が実施されます。

つまり、感染症の蔓延予防のために自治体が費用負担をして、接種を推奨するワクチンと認識されると良いでしょう。

なぜニュースとして大きく取り上げられているのか?

HPVワクチンは、2013年に日本で定期接種のワクチンだったにも関わらず、積極的な勧奨を一時的に控えられておりました。それが、接種データの蓄積により、安全性や有効性が改めて確認され、2021年1126日に積極的勧奨が再開となり、2022年4月から個別の勧奨(個別に接種のお知らせを送る取組)が順次行われております。

そして、今回さらに9HPVワクチンの定期接種に向けた報道が出ました。このような変化のあるワクチンだったために、これだけの規模のニュースとして、皆様に周知されているのかと思います。

いずれにせよ、‘H P Vワクチンは安全である’という根拠が蓄積され、国がさらに予防すべきウィルスの種類を増やし、定期接種のワクチンとしてHPVワクチンの種類をもう一種類追加で認める動きが出ているということをみなさんが改めて認識することできるかと思います。

HPVワクチンの定期接種を検討するにあたって認知すべき事項

  1. HPVワクチンは、3種類である
    HPVワクチンは2つ(2価と表現されます)、4つ(4価)、9つ(9価)のウィルスを予防する3種類のワクチンがあります。来年春以降、定期接種になると報道のあったワクチンは、9つのウィルスを予防する9価のワクチンになります。9価ワクチンには、2価ワクチン・4価ワクチンの要素が含まれます。つまり、9価ワクチンの接種によって、2価・4価ワクチンによって予防されうるウィルスも予防が可能です。予防という観点で言えば、9価ワクチンが一番守備範囲の広いワクチンと言い換えられるでしょう。
  2. 9価のHPVワクチン(国産)の適用の対象は、女性である
    9価H P Vワクチン(国産)は、男性への接種の適用が現在ありません。したがって、来春以降、定期接種の恩恵を受けることができる対象は、女性に限定されると予想されます。男性の皆さんは、残念ながら定期接種の対象からは外れ、無料で接種することはできないでしょう。
  3. 途中でHPVワクチンの種類の変更ができない
    ワクチンの説明書である添付文書には、3回の接種全て同じ種類で行うことが推奨されております。一方で、途中で変更したことによる不利益(有害事象)の発生もなかったという研究報告もありますが、補償適用の観点などからも、決められたルール内での接種を当院としてはお勧めしております。 

  4. HPVワクチンの積極的勧奨の対象は、小学6年から高校1年相当の女性
    報道によれば、定期接種の対象は、現在行われているHPVワクチンの積極的勧奨の対象者と同様になるようです。キャッチアップ接種などが考慮され、少し対象年齢幅が生まれる可能性はあります。おそらく定期接種対象者は、小学6年から高校1年相当です。逆を言えば、この年齢から大きく離れた方が対象となることはないでしょう。

対象者別の接種への考え方

今まさにH P Vワクチンを接種している方へ

認知すべき事項ので記載した通り、途中でワクチンの種類変更は認められておりません。そのために、今2or4価のHPVのワクチンを接種している方は、そのまま予定通り、ワクチン接種を完了することをお勧めします。

医学的には、種類を変えても副反応が起きた報告はありません。さらに、4価から9価のHPVワクチンへ途中変更したことで、9価の抗体を得ることができたという報告もあります。(Hum Vaccin Immunother. 2016;12(1):20-9.

ただし、途中でワクチンの種類を変更することで、副反応や有害事象が生じた際に、救済措置の対象外となってしまう可能性があります。

したがって、9価ワクチン接種を受けたい方も現在のワクチン接種完了後に実施することをお勧めします。

今回の報道を受けて、9価ワクチンへの関心が湧いた方もいらっしゃるかもしれません。定期接種の対象・対象外を問わず、2or4価→9価ワクチンを接種して、感染予防しうるウィルスの種類を増やすことも有益かと思います。追加の接種計画についてKARADA内科クリニックの感染症専門医に是非ご相談くださいませ。

これからHPVワクチン接種を検討していた方へ

これから接種を検討される方の中で、「9価HPVワクチンは高額である」などコストを懸念して、接種に対して二の足を踏んでいた方もいらっしゃると思います。この点に関しては、今回の報道を受けて、状況が変わる可能性があります。来春以降の定期接種化によって、一部の方は9価のHPVワクチンが実質自己負担額なしで接種ができることが見込まれているからです。

ただし、医学的に重要なことは、初めての性交渉より前にHPVワクチンを接種しておくことです。したがって、定期接種化を待って、感染予防の機会を失わないように注意が必要です。

性交渉開始の年齢は個人差があるところですが、一般的には、17歳になるまでに接種すると、30歳までに子宮頸がんを発症する確率が88%下がると言われております。一方で、17歳以上での接種の場合は53%にとどまります(N Engl J Med. 2020 Oct 1;383(14):1340-1348.)。

今回の報道では、定期接種化は早くても約半年先の来年の4月以降であり、加えて、ワクチン接種完了するには6ヶ月はかかるため、定期接種化による無料の9価ワクチン接種完了は1年以上先になります。

以上を考慮すると、定期接種によって9価のHPVワクチンの接種を17歳になるまでに完了するには、現在16歳を迎える前の方が対象になるかと思います。おそらく公費の対象者もその年齢になるかと思います。あくまでも、性行為を開始にはまだ時間がかかりそうということが前提になりますが、15才以下の方は少し接種のタイミングを遅らせて、定期接種化を待った上で、自己負担額なしで接種することを計画されてもよろしいかと考えられます。

逆に、認知すべき事項で記載した通り、16歳以上の方は対象から外れるでしょう。中には、キャッチアップ接種などの助成が出る可能性もありますが、今回の報道でも定期接種化によるワクチン接種の恩恵にはあやかれない可能性が高いと考えます。

コストも重要な観点ですし、その他自身の価値観や状況を合わせて、KARADA内科クリニックの感染症専門医に接種計画のご相談いただければと思います。一緒に接種計画を立てていきましょう。外来では、実際に接種をしなくても、相談することを目的に受診いただくことも可能です。

男性の方へ

現在男性の方で、現在4価HPVワクチン(国産)あるいは9価HPVワクチン(輸入)を接種している方もいらっしゃるかと思います。報道を受けて、9価HPVワクチン(国産)に変更し、自己負担額なしに接種できることを期待されている方もいらっしゃるかもしれません。認知すべき事項にある通り、男性が定期接種の対象になるとは考えにくいです。このままスケジュールを完了されることをお勧めします。

次に、子宮頸がんワクチンを接種していない男性の方についてです。報道にある定期接種化、つまり男性が自己負担額なしで子宮頸癌のワクチンを打つことは難しいと思われます。

もしこの報道を通じて、子宮頸癌ワクチンに興味が湧いた方がいらっしゃれば是非ご相談ください。これまでは、原則男性には9価のH P Vワクチン(輸入)の接種あるいは2価or4価のワクチン接種(国産)を計画しておりました。

ただ、9価のHPVワクチン(輸入)に関しては、現在入荷ができない状態です。輸入代行業者より、「9価HPVワクチンの輸入が厚労省から認められなくなってしまった」と連絡があり、厚生労働省に確認を入れたところ「成分が同じである製品が国内で流通しているため」と言う認識のもと出荷を許可しないことが判明しております。(詳細はこちら

そのため、今後輸入9価ワクチンの接種は本邦ではできないものと現時点では認識ください。何か副反応が生じた際の救済措置の問題などもありますが、国産の9価のワクチン接種も選択肢になるかと思います。いずれにせよ、ワクチンの種類の選択やその有効性などに関しては、KARADA内科クリニックの外来にて感染症専門医にご相談くださいませ。

最後に

9価のHPVワクチンの定期接種化の報道があり、今回記事を書きました。定期接種による恩恵を受けられる方は限られているかもしれません。ただし、感染症専門医としては、子宮頸癌と言う癌の原因になりうるウィルスの予防に貢献するワクチンがこのような報道や制度によって社会に広く知れ渡ることは、喜ばしいことと考えます。

今回の報道をはじめ、皆さんが感染対策の一つとして予防接種に興味が湧き、各種予防接種を通じて皆さんの健康へのお手伝いができればと私たちは願っております。

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KARADA内科クリニック渋谷 院長 【資格】医学博士、日本感染症学会専門医、日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医、日本内科学会認定総合内科専門医、日本医師会認定産業医、臨床研修指導医(厚生労働省) 東京だけではなく、北海道のオーホーツク海を目の前にしながらも総合内科医としてその地域に根ざした診療に従事してきた。また、内科の専門として感染症専門医としてもこれまで一般的な感染症診療のみならず、ワクチン接種や性感染症やHIV感染症などの診療にも取り組んできた。 また、研究者として、医療現場の日常に潜む倫理的な課題にも向き合いながら学会や論文で発信を続けている。

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