現在、日本各地で百日咳の患者数が急増しています。2025年に入ってからの累積患者数は4,100人を超え、前年1年間の報告数をすでに上回っています。 患者さんの多くは10代以下の若年層ですが、成人の報告も増加しています。特に、ワクチン接種歴があるものの免疫が低下している層での感染が目立ちます。
その中でおススメしたいのが、子どもの頃に受けた三種混合ワクチン(百日咳・ジフテリア・破傷風)の”大人向け追加接種”です。
日本では「トリビック」というワクチンがこの目的で使われていますが、「大人に使っても大丈夫なの?」「副反応は?」と疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、感染症専門医の視点から、成人のトリビック接種について、効果や副反応、接種の対象となる人などをわかりやすく解説します。
トリビック(製造:武田薬品工業)は、百日咳、ジフテリア、破傷風の三つの病気を予防するワクチンです。
もともとは小児用に開発されたものですが、現在は成人にも使用が認められており、追加免疫としての接種が可能です。
成人に対しても1回0.5mLを筋肉注射することで追加免疫が得られるとされています。
これは、特に百日咳が流行している時期に、他人への感染を防ぐために非常に有効です。
百日咳は子どもだけの病気ではありません。大人が軽い咳程度の症状で感染していることも多く、知らないうちに赤ちゃんにうつしてしまうこともあります。
そのため、家族や医療関係者など、乳児に接する人は特に接種が推奨されます。
トリビックを成人が接種することで、百日咳だけでなく、破傷風やジフテリアへの免疫も再強化されます。
破傷風は自然に感染しても免疫がつかないため、10年ごとの追加接種が必要とされています。
一方、副反応についても知っておくことが大切です。
トリビックは小児向けに設計されているため、成人が接種すると注射部位の腫れ、赤み、痛みなどの局所反応が比較的高頻度で見られます。
これに対して、海外で使われている成人用三種混合ワクチン(Tdap)は成分量が調整されており、副反応が少ないとされています。
しかし、日本では現在のところ未承認のため、輸入ワクチンとしての扱いになります。KARADA内科クリニックではこちらの輸入ワクチンも取り扱いがございます。
それでも、百日咳の感染を防ぐ意義は大きく、特に流行期やリスクの高い職業・家庭環境の方にはメリットが上回ると考えられます。
百日咳の予防接種は、特に以下のような人に勧められます。
これまでの日本では、成人に三種混合ワクチンを打つという習慣があまり根付いていませんでした。
しかし、百日咳が再び流行している今、周囲の人を守る意味でも大人の追加接種が重要になっています。
海外では、成人へのTdap接種が常識となっており、妊娠のたびに打つ国もあります。
日本でも今後は、輸入ワクチンの活用や制度の整備が進むことが期待されます。
トリビックは、日本国内で成人にも接種が認められている三種混合ワクチンです。
副反応はあるものの、百日咳や破傷風の予防に大きな効果があり、特に乳児や高齢者を守るために重要な役割を果たします。
大人だからといって、百日咳とは無縁ではありません。
自分のため、そして周囲の大切な人のために、ワクチン接種についてぜひ一度考えてみてください。
【引用・参考文献】
J-STAGE『成人に対する DTaP ワクチン接種後の安全性評価』