最近報道で「ヒトメタニューモウイルス」という言葉を聞くようになったと思います。
「中国で増加しているウイルス!」と聞いた覚えはないでしょうか?
このウイルスは決して新しく発見されたウイルスではなく、すでに「風邪の一つのウイルス」として日本でも存在しているウイルスです。このウイルスについて解説いたします。
ヒトメタニューモウイルスの潜伏期間は4~6日程度とされています。ウイルスに感染しても、症状が現れるまでこの期間は無症状のことが多いですが、潜伏期間中でもウイルスを排出して他の人に感染させる可能性があります。
ヒトメタニューモウイルスは、症状が現れる1~2日前からウイルスを排出し始め、症状が現れている間は特に感染性が高いとされています。
健康な成人の場合、症状が治まってから数日以内にはウイルス排出が収まることが多いです。
しかし、乳幼児や高齢者、免疫抑制状態の患者では、ウイルス排出が長期化することがあります(1~2週間以上の場合も)。
また、一回感染しても、抗体が持続することはなく、生涯で何回もかかることがわかっています。
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、主に呼吸器に感染するウイルスで、子どもから高齢者まで幅広い年齢層で感染が確認されています。症状は軽度から重度まで幅広く、以下のようなものが含まれます
発熱
咳
鼻水
のどの痛み
倦怠感
喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという音)
呼吸困難
気管支炎
肺炎
急性細気管支炎(特に乳幼児で多い)
一般的な風邪やインフルエンザ、他の呼吸器感染症と似ていますが、小児や基礎疾患のある患者、高齢者では重症化するリスクがあります。
日本においては、保険診療で検査を受けることができるのは、「6歳以下の小児で肺炎が疑われる場合」に限られます。つまり、成人では保険診療で検査を受けることはできません。
ただし、新型コロナウイルス感染症のPCR検査の中に、インフルエンザやRSウイルス、マイコプラズマなど15種類の病原体をまとめて検査をすることができる検査はあります。その中にヒトメタニューモウイルスも入っているので、それで判明することはあります。
現在、治療薬や予防ワクチンはありません。そのため、以下のような一般的な感染予防策が重要です。
症状を抑える対症療法が基本となります。インフルエンザのタミフルのような抗ウイルス薬はありません。重症化リスクがある方で、呼吸困難や高熱が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう
小児や高齢者で重症化してしまい、肺炎や気管支炎を起こしてしまうことがあるウイルスです。健康な成人にとっては「咳の出る風邪」で終わることがほとんどです。そのため日本では成人に対しては現状保険適応とはなっておらず、検査をすることが実際はほぼありません。感染してしまっても特効薬などはありませんので、自宅で療養するしかありません。後遺症についてはまだわからないことも多く、今後のデータ蓄積が重要となってきます。
一度感染しても、何回でも感染してしまう可能性があるウイルスですので、ほかの風邪と同様に予防することが重要です。