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B型肝炎

B型肝炎とは

B型肝炎(活動期)の母親から生まれる新生児期を中心とした感染と、思春期以降の性行為(血液や体液の濃厚接触)を通じた感染の2つが主な原因です。輸血や医療従事者の注射針による針刺し事故など血液を介した感染が問題となることもあります。

渡航の場合、性行為関連による感染(海外での風俗利用・いわゆるその日限りの性行為など)、交通事故などで病院に搬送された際の輸血、あるいは医療従事者の留学(病院見学や実習・臨床)の際に感染の懸念があります。

前者は渡航前に特に想定していない方でも十分起こり得るし、それによって感染してしまった患者さんの診療経験もあります。是非渡航前のできうる予防策としてワクチン接種をご検討くださいませ。 一般に健康な(免疫不全でない)成人の感染では一過性感染が多く、急性肝炎の経過をとるものと不顕性感染(特に症状がなく経過すること)となるものがあります。一過性感染例では劇症化して死亡する例(約2%)を除くと、多くは、およそ3か月で肝機能が正常化します。

B型肝炎の症状

B型肝炎は、急性肝炎と慢性肝炎の大きく2つに分けられます。

B型急性肝炎:感染して1~6ヶ月の潜伏期間を経て、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、褐色尿、黄疸などが出現します。典型的な症状の症例では尿が濃くなったり、黄疸と言って眼目の白目の部分が黄色くなり、その後皮膚も黄色みを帯びてきたりします。症例の中には、肝炎の程度が軽くて、自分では気が付かないうちに治ってしまう例もあります。しかし、中には、激しい肝炎を起こして生命を維持できない状態(肝不全)となる、いわゆる劇症肝炎になることもあります。

B型慢性肝炎:出産時ないし乳幼児期にHBVが感染すると、幼い体の免疫系はウイルスを病原体と判断できず、持続的にウイルスが存在し続ける状態(持続感染)に移行します。生後数年~数十年間は肝炎は起きないで、感染したHBVは排除されずに体内で共存しており、この状態を無症候性キャリアと言います。思春期以降に一過性の肝炎を起こした後は、そのまま肝機能が一生安定する人がおよそ80~90%ですが、残りの10~20%の人は肝炎の状態が持続します(慢性肝炎)。中には、肝硬変あるいは肝細胞癌になる人もおります。

B型肝炎の診断・検査

採血によって感染の有無を確認することができます。
〜B型肝炎に関する検査〜
HBs抗原:まずはこちらの項目を調べます。HBs抗原が陽性であれば、100%HBVに感染していると考えられます。逆にHBs抗原が陰性であればほとんどB型肝炎ウィルスに感染していないと考えられます。
HBe抗原、HBe抗体:HBs抗原が陽性であれば、次にHBe抗原とHBe抗体を調べます。一般にHBe抗原陽性かつHBe抗体陰性の場合は、HBVの増殖力が強く、他の人への感染の可能性が高いと考えられます。肝炎の活動性が高い時期の多くはこの状態です。一方でHBe抗原陰性かつHBe抗体陽性の場合は、HBVの増殖は弱く、肝炎は鎮静化し、他の人への感染の可能性が低いことが多いと考えられます。中にはHBe抗体が陽性になっても、肝炎が徐々に進行して肝硬変になったり、あるいは肝炎が進行しなくても肝がんが発生したりすることがありますので定期的な血液検査や画像検査(超音波検査やCT検査等)が必要です。HBe抗体陽性の人は他人に感染させるリスクは高くないですが、万一感染すると劇症肝炎のような激しい肝炎を起こすことがあるため注意が必要です。パートナーにワクチンを打つなどの処置が必要です。

HBc抗体:B型肝炎ウイルスが感染した人はほぼ全員が陽性になります。急性肝炎の早期からIgMクラスのHBc抗体が陽性になるので、IgM HBc抗体の測定は急性肝炎の早期の診断、特に劇症肝炎や重症肝炎でHBs抗原やHBs抗体がどちらも陰性の場合などに特に有用です。B型肝炎ウイルスが持続した患者さんではIgGクラスの抗体価が高値になり、病状が改善してHBs抗原が陰性になった人でもキャリアであったことが証明できます。

HBs抗体:B型急性肝炎を発症して治癒した人、あるいはB型肝炎ワクチンを接種した人はHBs抗体が陽性となります。HBs抗体が陽性の人は、仮にHBVが体内に入ってきてもウイルスは排除され、肝炎を発症することはありません。HBs抗体はいわゆる中和抗体といって、はしかの抗体と同じような感染を防ぐ役割をします。実際にB型肝炎ウイルスが感染してHBs抗体が陽性になった人はHBc抗体も陽性になりますが、ワクチンでHBs抗体が陽性になった人はHBc抗体は陰性です。
HBV-DNA:HBVのウイルス量を具体的に数値化したものがHBV-DNAであり、特にインターフェロン(IFN)療法や抗ウイルス薬(核酸アナログ)を使用した治療効果を見るときに有用です。

〜肝機能に関する検査〜
AST (GOT)、ALT (GPT):肝炎を発症しているかどうかの手がかりとして、あるいは、生じた肝炎の程度を調べるために確認される項目です。これらは肝臓の細胞の中にある酵素で、細胞が肝炎で破壊されると血液中に出てきます。正常値は、おおよそ40~50 U/L未満が目安となります。AST、ALTが高ければ高いほど、肝炎の程度は強いと言えます。一般にAST、ALTの数値が高ければ高いほど、肝炎を患った期間が長ければ長いほど、肝硬変になりやすいといわれています。B型慢性肝炎の患者さんの中には、20歳代から激しい急性増悪を繰り返し、比較的若い30、40歳代で肝硬変に進行することもあります。

血清ビリルビン値:急性肝炎あるいは肝硬変で肝臓の機能が著しく低下すると黄疸が出現します。この黄疸の程度の指標になるのが血清ビリルビン値です。正常値は1~1.5 mg/dL以下で3.0 mg/dL以上になると眼球結膜あるいは皮膚が黄色くなる「黄疸」が出現し始めます。

B型肝炎の治療

B型急性肝炎:急性肝炎に対しては、抗ウイルス薬での治療は必要ありません。食欲低下などの症状があれば水分や栄養補給のために点滴などをおこないますが、 基本的には慢性肝炎の治療に使う肝庇護薬は使用せず、無治療で自然にHBVが排除されるのを待ちます。ただし急性肝炎の中でも、劇症肝炎と呼ばれる非常に強い肝炎が起こり、放置すれば命にかかわる可能性もあると予想される場合には、抗ウイルス薬として核酸アナログ製剤の投与、ステロイドの大量投与や血液を浄化するための血漿交換、血液透析などの肝臓の機能を補助する特殊な治療を必要とする場合があります。それでもさらに肝炎が進行する場合は、肝移植を行わないと救命できない場合もあります。

B型慢性肝炎:B型慢性肝炎の患者さんに持続感染しているHBVは身体から完全排除することは出来ないことがわかっています。C型慢性肝炎の場合にはC型肝炎ウイルス(HCV)に対するインターフェロン(IFN)療法、あるいは直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の内服治療により、かなり高率にウイルスの増殖を抑えることが期待できますが、HBVに対してはIFNを用いても、後述の核酸アナログ製剤を用いても、現在の治療薬では、ウイルスの完全排除は期待できません。これがHBVに対する治療とHCVに対する治療の根本的な違いです。これをふまえてB型慢性肝炎の治療をすることになります。

HBVに対する抗ウイルス薬:IFN(注射薬)と核酸アナログ製剤(内服薬)の2種類に分けられ、主に治療として利用されております。

B型肝炎の予防

  • ワクチン
    国産:4週間間隔で2回接種し、さらに、半年から1年後に1回接種します。計3回接種によって、5-10年間有効と言われております。
    輸入:4週間間隔で2回接種し、さらに、半年から1年後に1回接種します。計3回接種によって、15-20年間有効と言われております。含まれている成分が国産ワクチンよりも高いため、国産ワクチンで過去に抗体がつかなかった方でも、輸入ワクチンだと抗体がしっかりつくこともあります。”

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