- 医学博士
- 日本感染症学会専門医・指導医
- 日本内科学会認定医
- 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
- 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
- 日本エイズ学会認定医
- 日本医師会認定産業医
- 臨床研修指導医(厚生労働省)
- 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
百日咳(ひゃくにちぜき)は、長く続くしつこい咳が特徴の感染症です。
子どもがかかる病気という印象がありますが、大人でも感染し、知らぬ間に広げてしまうことがあります。
この記事では、百日咳の基本から最新の検査・治療方法まで、わかりやすく解説します。
百日咳の原因は「ボルデテラ・パータシス(Bordetella pertussis)」という細菌です。
この細菌がのどや気道に感染し、特徴的な咳を引き起こします。
感染してから7~10日程度の潜伏期間を経て、症状が現れます。
最初は風邪のような軽い症状ですが、次第に特徴的な咳が目立ってきます。
咳の症状は大きく3つの時期に分かれます:
軽い咳、くしゃみ、鼻水。風邪と区別がつきにくいです。
「ヒュー」という音を伴う連続した咳(スタッカート咳)が特徴です。夜間に悪化しやすく、息が苦しくなることもあります。
徐々に咳が軽くなりますが、完全に消えるまでに時間がかかります。
特に乳児の場合、咳によって呼吸が止まったり、けいれんを起こしたりすることがあります。
大人では軽症のことが多く、単なる風邪と勘違いされるケースも少なくありません。
百日咳は、感染した人の咳やくしゃみなどによって飛び散る「飛沫(ひまつ)感染」で広がります。
つまり、咳のしぶきに含まれる細菌を吸い込むことで感染します。
特に人が多く集まる場所、たとえば保育園、学校、職場などでは、知らぬ間に広がりやすいです。
大人が軽い症状のまま子どもにうつしてしまう「サイレントキャリア」にも注意が必要です。
百日咳は1年を通して見られますが、特に春から夏にかけて患者数が増える傾向があります。
日本では、5歳未満の子どもと10代後半から大人にかけての2つの年齢層で多く見られます。
予防接種(定期接種)を受けていない場合や、ワクチン効果が薄れてきた大人は特に注意が必要です。
実際、大人の百日咳が原因で乳児にうつり、重症化するケースも報告されています。
百日咳が疑われる場合、医師は症状の経過や咳の特徴から診断を考えます。
ただし、初期は風邪との区別が難しいため、検査を行うことが一般的です。
よく使われる検査には以下のようなものがあります:
百日咳と診断された場合、主にマクロライド系抗菌薬(例:クラリスロマイシンなど)が使われます。
これは細菌の増殖を抑える薬で、発症から早い段階で使うことで症状の悪化を防ぐ効果があります。
ただし、すでに咳が強く出ている時期に入っていると、薬の効果は限定的です。
このため、早めの受診と診断がとても大切です。
また、咳を和らげる目的で咳止めや吸入薬が処方されることもありますが、百日咳の咳にはあまり効かないこともあります。
百日咳はワクチンで予防することができます。
日本では、定期予防接種(四種混合ワクチン)として、乳児期に3回+追加1回の計4回接種が推奨されています。
しかし、ワクチンの効果は時間とともに弱まります。
そのため、思春期以降や大人では再び感染する可能性があります。
欧米では、成人向けの追加接種(Tdapワクチン)が推奨されており、日本でも必要性が高まっています。
特に妊娠中の女性や乳児と接する機会が多い人は、接種を検討してもよいでしょう。
ワクチンについてはこちらのブログを参照:百日咳が流行中!成人の三種混合ワクチン「トリビック」とは?効果や副反応を解説
また、百日咳にかかっている人と接触しないようにする「接触予防」も大切です。
こまめな手洗い、マスクの着用、体調が悪いときは外出を控えるなど、基本的な感染対策が有効です。
百日咳は、風邪と見分けがつきにくく、大人でもかかる可能性のある病気です。
特に乳児では命に関わることもあるため、正しい知識と早めの対応が重要です。
症状が長引く咳の場合は、自己判断せず、医療機関を受診してください。
また、ワクチン接種によって自分自身だけでなく、大切な家族や周囲の人も守ることができます。
🔍 参考文献・出典
国立感染症研究所「百日咳とは」