- 医学博士
- 日本感染症学会専門医・指導医
- 日本内科学会認定医
- 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
- 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
- 日本エイズ学会認定医
- 日本医師会認定産業医
- 臨床研修指導医(厚生労働省)
- 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
肺気腫という言葉の方が皆様にとって馴染みのある病名でしょうか。現在は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)という病名で医学の用語として用いられております。
肺気腫(COPD)とは、肺や気管支に炎症が起き、それが長期間継続することで、肺胞(肺の中を通る気管支の末端にある小さな袋状の組織)が破壊されてしまう病気のことです。
この肺胞の壁が壊れることで、隣り合う肺胞同士が結合し、肺の中がスカスカの状態になってしまうことから、呼吸の状態に問題を引き起こす。
基本的に、破壊された肺胞を元どおりに治すことはできません。初期は自覚症状が乏しく、進行もゆっくり進むため、症状が悪化してから発見されるケースも多いです。
よく診察室では、簡単に患者さんの血中酸素濃度を計測しますが、通常よりもかなり低い値を肺気腫(COPD)の患者さんでは測定されます。
しかし、前述の通り、慢性の経過で進行する病態であるために患者さん自身はあまり呼吸の苦しさを感じていないことが多いです。
肺胞が破壊される原因として挙げられているのが、有害な物質を長期間吸入することです。
特にタバコとの相関関係が強く指摘されており、実際に肺気腫の患者のほとんどが喫煙者です。さらに、喫煙歴が長く、本数もより多く吸っている人のほうが、罹患しやすいと言えるでしょう。
加齢によっても肺のしなやかさは失われていくので、若い時からタバコを吸い始めた高齢者は発症のリスクが高まります。また非喫煙者であっても、常にタバコの煙が周囲にあるような受動喫煙の状況に長い間いると、発症する可能性があります。
この他、有害物質にさらされる環境下での労働、大気汚染や遺伝なども原因となりえます。
よく見かける肺気腫(COPD)の患者さんは、「50歳以上の喫煙者が、呼吸困難(運動・労作で増悪し、緩やかに症状が悪化している)、慢性的に咳が出る、慢性的に痰がらみが多いなどの訴えで来院される」です。
このような方に肺気腫(COPD)がないか私達も注意して、診察することが多いです。
肺気腫(COPD)は数年かけて発症し、慢性的に進行します。したがって、肺気腫(COPD)のステージ・状態によって様々な症状を訴えてKARADA内科クリニックを受診されることが多いです。
具体的には症状には、以下のようなものがあります。
この病気も医師による病歴聴取と診察、加えて検査を行いながら診断をしていきます。
診察の特徴として以下のものがあります。KARADA内科クリニックではこのような所見に注意しながら、診察しております。
KARADA内科クリニックでは、検査としては、胸部エックス線検査を行って肺の状態を確認させてていただきます。
さらに精密な検査が必要な場合はCT検査やスパイロメトリーという検査を実施する必要がある場合、他施設にお願いすることがあります。CTではより詳細に肺の状態を把握するために実施します。
スパイロメトリーとは、呼吸時に空気を吐く力を測定する機器を使い、呼吸機能を評価するための検査になります。具体的に、閉塞性換気障害と呼ばれる障害があるかどうか、障害があるとすれば、どのくらいの程度かを調べるものです。1秒間で吐ける息の量を1秒量として測定する。
その結果、70%以下という数値が出れば閉塞性換気障害となり、数値が低くなるほど症状が進行して重症度が高いと判断される。
他には、たんを採取しての検査や血液検査、心電図など、状況に応じて検査を行い、その他の病気がないか心臓や肺の状態を評価していくこととなります。
治療のポイントですが、病気を進行させないことです。
肺気腫(COPD)という病気を現代の医療で、元の状態には戻す事はできないのです。
破壊されてしまった肺胞を元どおりに治すことはできません。このため根治を目的にした治療ではなく、病気が進行しないように食い止めたり、出ている症状を緩和したりするための治療を行います。
また、喫煙者である場合は、まずは禁煙することが何よりも重要となります。
次に、治療自体は安定期と増悪時に分けて考えます。KARADA内科クリニックに受診される場合、診断前の方あるいは安定期の方が多い方と思われますので、ここでは安定期の治療を紹介し治療のイメージを持っていただければと思います。増悪時には入院加療など高度な医療機関で治療をされる方が多いです。
安定期は、薬物加療のみならず様々な要素を理解しながら生活していくことが重要とされております。
病気の理解、運動、栄養、禁煙、増悪予防、在宅酸素など多角的に治療していく必要があります。細かいアドバイスになりますので、この辺りもしっかりと診察室で皆さんにお伝えできればと思っております。
薬物療法に関しては、治療の中心は気管支拡張薬です。気管支拡張薬には、貼付薬や内服薬もありますが、主に気管支のみに作用し、全身的な副作用が起こりにくい吸入薬をよく使います。この薬を使い気道を広げると空気の通りがよくなり、呼吸困難を軽減します。
気管支拡張薬には、「β2刺激薬」「抗コリン薬」「テオフィリン」の3種類があります。これらを重症度に合わせて併用していきます。さらに、増悪を繰り返すなど症状が重いときには「吸入ステロイド薬」も使用します。
様々なタイプの吸入薬があります。ただし、誤った方法で使用すると効果が下がるため、こちらや薬剤師の先生方から細やかな指導やアドバイスがあると思います。吸入後に口やのどに薬が残り、のどの違和感などの副作用が起こることがあります。
副作用の予防のため、吸入後は必ずうがいをして、口やのどに残っている薬剤を洗い流してください。状態を評価しながら、適宜吸入薬など提案させていただきます。
予防をする上で最も大切なことは、喫煙者であればできるだけ早く禁煙することです。
また、肺気腫は初期の段階では症状が出にくいため、定期的に健康診断を受けて早期発見・早期治療につなげることが重要となります。
肺気腫を患っている人は、風邪やインフルエンザなどにかかると急性増悪と呼ばれる状態になり、症状が一気に悪化して命に関わるケースもあります。このため、日頃から手洗いとうがいを徹底し、ウイルスや細菌の感染を防ぐことも大切です。
インフルエンザあるいは肺炎球菌のワクチン(予防接種)に関しても有用であるとの報告があります。この辺りもKARADA内科クリニックの感染症専門医にもご相談いただければ幸いです。
監修:KARADA内科クリニック医師 田中雅之