- 医学博士
- 日本感染症学会専門医・指導医
- 日本内科学会認定医
- 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
- 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
- 日本エイズ学会認定医
- 日本医師会認定産業医
- 臨床研修指導医(厚生労働省)
- 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)
髄膜炎菌という細菌に感染してしまい、発症する病気の総称を「髄膜炎菌感染症」と言います。若くて健康な人でも、これを発症してしまうと死に至ることがあり、非常に危険な感染症です。ただ、あらかじめワクチン(予防接種)をうっておくことで、予防もできます。集団生活や寮生活、オリンピックやワールドカップなどの人が密集して集まるときに、感染・発症してしまうリスクが高まります。 髄膜炎菌は少なくとも13種類(A, B, C, D, X, Y, Z, E, W-135, H, I ,K, L)の血清型に分類されています。脳の感染症である髄膜炎の原因となるのはA, B, C, Y, W-135が多く、とくにA, B, Cが全体の90%以上を占めます。日本ではYが多いとされています。
髄膜炎菌が体のどこに感染するのかで症状は異なります。のどにこの菌が感染してしまい、いわゆる保菌状態(持っているが症状はない)という人の存在も知られています。 普段は菌が存在しない場所、つまり血液中や髄液中(脳を包んでいる膜を流れる体液)にこの菌が入ってしまったときに、重症で命にかかわる感染症となってしまいます。そのような状態を、「侵襲型髄膜炎菌感染症」と呼びます。症状は、発熱、頭痛、関節痛、吐気、嘔吐などで、ショックと言われる血圧が低下した状態になってしまうと、意識障害を引き起こしてしまいます。このような重篤な症状を起こしてしまうため、この診断がつくときにはすでに病院へ搬送されていたり、入院していると考えられます。
髄膜炎菌を見つけるために、血液や髄液を採取し、培養検査を行います(血液培養、髄液培養)。その培養検査により髄膜炎菌が検出されれば、確定診断となります。
抗生物質の点滴による治療を行います。侵襲性髄膜炎菌感染症は命にかかわりますので、外来で内服薬による治療は行いません、というよりも行えません。ほぼ全例で入院のうえ、点滴加療となります。
抗生物質の例:セフトリアキソン(CTRX)、セフォタキシム(CTX)
・感染もしくは保菌者のくしゃみや咳などのつばから感染します(飛沫感染)。マスクや手指衛生が有効です。
・また、予防接種(ワクチン)があります。国産のワクチンでは、メナクトラ®という商品名で、髄膜炎血清型A,C,Y及びW-135に対し有効で、下記のような方に接種が推奨されます。
1.髄膜炎流行地域へ渡航する方
2.学校の寮、警察学校などで集団生活をする方、する予定の方
3.大勢の人の集まるところに行く予定の方(コンサートやオリンピック・ワールドカップなどのスポーツ観戦など)
4.HIV感染症、無脾症、補体機能不全などの免疫不全がある方 効果はおよそ80-95%で、接種から5年経つと効果は失われるため、5年ごとの接種が推奨されます。
※ワクチンページへ(クリック)
・髄膜炎菌感染症を発症してしまった方と、濃厚接触があった方(家族、同じ寮で生活をしていた、同じ部活で活動をしていた、医療従事者)に対して、抗生物質の予防内服を行います。それにより発症リスクを下げ、発症を予防することができるからです。
予防投与例:シプロフロキサシン500mg内服1回
アメリカなどに留学する際や、日本では警察学校への入寮前に、ワクチン接種を求められます。また、メッカ巡礼(ハッジ)の際にも髄膜炎菌ワクチン接種が義務付けられています。