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橋本病(甲状腺機能低下症)

記事執筆者

KARADA内科クリニック 五反田院

院長 佐藤 昭裕

KARADA内科クリニック 五反田院

院長 佐藤 昭裕

総合診療医として全身の幅広い診療と、感染症専門医としてHIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、集中治療、院内感染対策、ワクチン診療などに従事。性感染症(性病検査)も専門とする。
「東京都感染症マニュアル2018」や「感染症クイック・リファレンス」などの作成に携わる。

東京医科大学病院感染症科医局長や東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長などを歴任し、現職に至る。

-著書『感染症専門医が普段やっている 感染症自衛マニュアル』
●日本テレビ スッキリに感染症専門家として毎週出演していた他、世界一受けたい授業・ザ!世界仰天ニュースなど出演多数
●Yahoo!ニュース公式コメンテーター

認定資格
  • 医学博士
  • 日本感染症学会専門医・指導医
  • 日本内科学会認定医
  • 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
  • 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
  • 日本エイズ学会認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 臨床研修指導医(厚生労働省)
  • 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)

橋本病とは甲状腺に慢性の炎症が起こる病気であり、慢性甲状腺炎とも言います。甲状腺の機能は低下している状態です。

甲状腺とは、のどぼとけのすぐ下あたりにある重さ10g~20gほどの小さな臓器で、甲状腺ホルモンを作っています。

性の炎症のためにこの小さい甲状腺が腫れてきたり、甲状腺ホルモンを作る働きが低下します。甲状腺ホルモンが減ったことによって、甲状腺機能低下症を起こします。

男女比は約1対20くらいで女性の割合が多く、年齢は30~40歳代に多いです。

原因は自己免疫の異常と言われております。免疫機能は本来細菌やウイルスから身体を守るための機能ですが、その働きがうまくいかなくなり自分の身体を攻撃してしまいます。これを自己免疫疾患とも言われたりします。

橋本病は、免疫異常による甲状腺に炎症が起きている甲状腺の自己免疫疾患でして、炎症が持続すると、甲状腺ホルモンを作る働きが不十分になり、甲状腺ホルモンが不足し甲状腺機能低下症となります。

それによって、様々な症状が現れます。

1912年に日本人の橋本策博士が世界で初めてドイツの医学誌に発表したために、「橋本病」という病名がつけられた歴史があります。

ただし、それから100年以上が経過したが、自己免疫の異常がどのようなきっかけで起こるのか、いまだに明らかになっていません。

【症状】

橋下病の症状は多岐に渡ることから、私はよく甲状腺の機能を車のアクセルとブレーキとして例えて患者さんに説明することがあります。

甲状腺機能低下は車でいうならブレーキを踏んでいるような状態であり、それに見合う症状を起こします。

ブレーキを踏んだ車→汗をかきにくく、ボテッとして、体重が増えたり、便秘になったり、落ち込んだり、むくみがでたりします。

一方で、甲状腺機能亢進があると、動悸がしたり、脈が早かったり、発汗して、体重が減ったり、下痢気味になったり、イライラしたりします。そのようなイメージでこの臓器の異常による諸症状を考えるとわかりやすいかもしれません。

橋下病で現れる症状(甲状腺ホルモンが少ない時)

  • 浮腫(むくみ)
  • 皮膚乾燥
  • 汗が少ない
  • 髪の毛が減る
  • 寒がり
  • 食欲低下
  • 体重増加
  • 便秘
  • 徐脈(脈が遅くなる
  • 無気力
  • ものごとに対する意欲・気力が低下
  • 忘れっぽい
  • 行動的ではない
  • すぐ眠くなる
  • 口がもつれる
  • 声がかすれる
  • ゆっくりしたしゃべり方
  • 筋力低下
  • 肩こり
  • 月経過多

【診断・検査】

診断は医師による病歴の確認と診察、採血で行います。

病歴の確認では、先ほどあげた症状の経過などを丁寧に伺うことによって、この病気を想起して検査に繋げることになります。

症状が多岐に渡ることから、患者さんの訴えも多様です。思わぬ訴えからこの病気を想起して、診断につながることもしばしば経験するところです。

診察上、橋本病は、正常時ではさわってもわからない小さい甲状腺が大きくなり、腫れとしてわかったり、表面が硬くなりごつごつしてきたりする場合もあります。

特に、男性や高齢の方では甲状腺が下の方にあって触診ではわかりにくいです。

血液検査では、甲状腺の自己免疫の異常があるかを検査します。

具体的には、甲状腺に対する抗体である抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)という項目を測定します。また、甲状腺から出る甲状腺ホルモン(FT3、FT4)の濃度もはかります。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、脳下垂体という場所から出ているホルモンで、甲状腺のホルモンを調節しています。これらをあわせてはかることで、甲状腺ホルモンのバランスのみだれがあるかどうか、つまり甲状腺ホルモンの治療が必要かどうかを判断できます。

場合によっては、KARADA内科クリニックより、他施設にお願いしてエコー検査を行うこともあります。エコー検査によって、その他の疾患の除外や甲状腺の形態の評価を行うことができます。なお、エコー検査は患者さんへの負担が少なく安心して行える検査です。

【治療】

治療が必要かどうかは、甲状腺ホルモンバランスの乱れがあるかどうかによって判断させていただきます。

甲状腺の機能が下がって、体内に必要な甲状腺ホルモンが足りない状態では、必要な量の甲状腺ホルモンを薬として内服し、甲状腺ホルモンを補います。甲状腺の機能が低下していない場合は治療の必要は特にありません。

治療は、患者さんの状況や病状に合わせて、方法が選択されます。

橋本病は女性に多く、例えば、妊娠を希望する場合は症状が出ていなくても妊娠前から治療が必要になる場合も多いため、専門医療機関にKARADA内科クリニックよりご相談させていただくことがあります。

具体的に、薬物加療として現在、抗甲状腺薬には、チアマゾール(MMI:メルカゾール)とプロピルチオウラシル(PTU:チウラジ-ル/プロパジール)の2種類があります。

抗甲状腺薬は、消化管から吸収されて血液中に移行し、甲状腺に取り込まれ、甲状腺ホルモンの生合成を抑制する作用があります。

プロピルチオウラシル(PTU:チウラジ-ル/プロパジール)は、肝臓や腎臓などの末梢臓器にある酵素活性を阻害することで、T4からT3への変換を抑制し、血中のT3の濃度をより低下させると報告されています。

ただし、この報告は大量のPTUを内服した場合です。一方、チアマゾール(MMI:メルカゾール)は、PTUの10倍以上の効果があるため、MMIが第1選択薬として処方されています。

近い将来妊娠を希望される場合は、PTUは母乳に出ないため、初めに使われます。

【予防】

橋本病であっても甲状腺の機能がきちんと働いていて甲状腺ホルモンのバランスに問題がない場合や、治療によって甲状腺ホルモンが体内に必要な量だけある場合は日常生活へ制限は特にありません。

ただし、甲状腺ホルモンに重度の異常が出ている場合は、甲状腺ホルモンが改善するまで身体に負担がかかることは避けると良いでしょう。

昆布や昆布だしなどヨウ素を多量に含む食品を食べるなどでヨウ素が過剰になると、甲状腺機能に影響が出る可能性があるとも言われておりますが、どの程度体内に取り込まれるかもわかりません。

過度に神経質にならず、バランスの良い食生活を心がけることがよいでしょう。


監修:KARADA内科クリニック医師 田中雅之

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