ブログ

2021.06.19 医療情報

海外渡航向けワクチン(予防接種)について

当院は感染症専門医が多数在籍する、ワクチンクリニックです。留学・海外渡航・海外赴任のワクチン・予防接種ご相談ください。


KARADA内科クリニック渋谷 院長の田中雅之です。 

今日は、海外渡航者のためのワクチンについてお話をしたいと思います。

 海外渡航のためのワクチンを私たちのクリニックでも実施しております。一般の内科医はもちろん、感染症専門医の中でも実際に渡航の準備されている方に対して、ワクチンを計画・接種する診療を日常的に実施されている医師は多くありません。

 私たちは、トラベルクリニックとして皆様の海外渡航をサポートするための準備を怠らず、日々スタッフ間で皆様をサポートする体制を整えております。

 コロナ禍の今、なぜ海外渡航のためのトラベルワクチンの話をするのか?

少し話が逸れるかもしれませんが、KARADA内科クリニックでは、渡航者のためのPCR検査を実施しております。今、渡航者と聞くと、多くの方が、「え?いま渡航する人そんなにいるのかな?」と思われるかもしれません。

 ただし、仕事の都合、海外赴任のためご家族皆様で渡航、あるいは、留学生(徐々に相談が増えてきております)など様々な事情を抱えて、現時点でもその数は少しずつ増えております。もちろん、海外渡航の際のPCRの検査がいつまで必要なものか、今後の世界的なCOVID19の流行状況や皆様のワクチンの接種状況によって影響するものでしょう。

その点についてはまた別途記事を書きたいと思います。

 さて、このような方々が、渡航のためのPCR検査として、渡航直前に来院された際に、帰り際など、『予防接種って必要でしたか?』という相談を受けることがしばしばあります。 

渡航される国、渡航期間、渡航先での行動の内容など様々な要因によって、もちろんワクチンの必要な種類やそもそもの接種の必要性が異なります。

 ただし、一つ言えることは、ワクチン接種の計画はお早めに!

ということです。

ワクチン接種は時間がかかる

仮に、接種が必要なワクチンがあったとした場合、その接種を完了するのに、最大1年かかるワクチンもあります。ワクチンは渡航をされる1年以上前から準備をする必要性がある場合もあると言い換えることができるでしょう。

 繰り返します、「ワクチン接種の計画はお早めに!」

 具体的には、B型肝炎ワクチンは、3回の接種必要であり、接種完了までに半年から1年かかります。たとえ、渡航1年を切ったとしても、KARADA内科クリニックではどのようにするのが良いのか相談を承ることができます。

現地で3回目のワクチンを接種することを検討する、一時帰国のタイミングで接種するなどの選択肢を感染症専門医として提示させていただくことでしょう。

 とにかく、幅広い選択肢の中で、ゆとりを持ってワクチン接種完了することが重要です。このようなご時世であっても、当院でもポツリポツリと、海外留学を控えた高校生や大学生、社会人の方の相談が出てきました。

今後のCOVID19流行状況やワクチンの接種の進み具合で大きく状況も異なっていると思いますが、そんな少し先の未来を見据えて、主に長期間海外へ渡航される方へのメッセージとして今日は、海外渡航のためのワクチンの記事を書いて参りたいと思います。

 トラベルワクチンの時に必ず確認する情報

渡航のためのワクチンは、皆様からの様々な情報を頂くことなしに、たとえ感染症専門医であっても適切な接種計画を提案することはできません。そのため、受診前に皆様に調べておいていただきたい情報がいくつかありますので、それをご紹介したいと思います。

 

  • 渡航先
  • 渡航期間
  • 渡航開始予定日
  • 渡航先での行動や地域の情報
  • ワクチン接種歴

・渡航先

ワクチンで病気を予防するということは、その渡航先で、その病気が流行しているかどうかがワクチンの種類の選択において重要です。

たとえば、腸チフスという病気があります。インドでは大変流行している病気でありますが、一方で米国やオーストラリアで感染する可能性は極めて低いです。そのため、当然、米国に渡航される方に、腸チフスのワクチンを推奨することはありません。

このように渡航先によって、ワクチンを接種する種類が異なります。次の表に、地域別(長期滞在の場合)の推奨ワクチンを提示します。なお、短期滞在の場合には必要となるワクチンの数が減るため、これに関してもまた別の機会にご説明させていただきます。

・渡航期間

上記では長期滞在に関する推奨されるワクチンの種類を提示しましたが、一方で、短期滞在(旅行や短期の出張など)において同様にワクチン接種が推奨されるわけではありません。もちろん皆さんこれまでの海外旅行などを振り返っても、短期の滞在の際に、前もってワクチン接種の準備をしていた方は少ないかもしれません。

ただし、短期の滞在とはいえ、場所によっては、あるいは、行動によっては感染症を罹患するリスクがありますので、医師に相談していただければ幸いです。

たとえば、短期滞在であってもA型肝炎のワクチン接種が推奨される地域は意外にも多く、北米やオーストラリアを除いて教科書的には推奨されております。また、黄熱病という病気のワクチンに関しては、熱帯アフリカや南米に滞在する人には接種が推奨されております。一部の国には入国時に、接種証明書(イエローカード)の提出を要求されることがあります。このワクチンは当院での取り扱いがありませんが、場合によっては、接種可能な医療機関をご紹介させていただきます。

・渡航開始予定日

これもまた重要な情報です。渡航開始日が分かると、接種の計画を立てることが可能となります。私はアルバイトなどを除き、医療業界でしかしか働いたことがないですのであまりよく知りませんでしたが、海外赴任・転勤というのは意外にもそれほど前もって知らされているものではなく、2~3ヶ月程度前に「では、5月からタイに転勤ね」など比較的軽くその決断を言い渡されることもあるとトラベルワクチンの外来で聞くことがしばしばあります。そのため、接種を予定することに当てる時間がそれほど長くないことも多いです。

さて、ここに、それぞれのワクチン接種の期間を掲載しておきます。

表(ワクチン接種の期間)はこちらをご確認ください。

 上記表を見ると、各ワクチンの目安となる接種の間隔や予定をこちらの表で確認いただけるものかと思います。渡航までの期間が短い場合に問題になってくる点について取り上げてみましょう。 

B型肝炎の接種についてです。表に記載の通り、国産ワクチンと輸入ワクチンがあります。国産ワクチンの間隔は、国産ワクチンは2回接種、輸入のワクチンは3回接種が必要です。

渡航時期に問わず、初回の接種に関してはいずれも問題なく済ませられます。ただし、2回目あるいは3回目の接種の間隔があくために、当院で接種できないことがあります。(国産と輸入のワクチンの内容の違いは別途ご説明の機会を設けたいと思います。)

1年後の接種を検討した場合に、たとえば一時帰国する予定を確認します。その予定があれば、その際に接種をしに来院いただくことをお勧めすることもあります。ただし、COVID19流行状況の現在はその見通しは立てにくいという観点から、初回の接種時には国産ではなく、海外でも投与が可能な可能性の高い、輸入ワクチンを選択される方も多いです。

このように渡航開始の予定日から接種計画を立てることになると、渡航前に必要なワクチンを全て打ち切るように計画するのが難しいということがお分かりになるのではないでしょうか。

 したがって、冒頭でも強調しているように、「ワクチン接種の計画はお早めに!」ということになるわけです。 

・渡航先での行動や地域の情報

予定される行動も気になるところです。

たとえば、タイに海外赴任される方がいらっしゃるとします。バンコクのオフィス街で仕事に従事される家族連れの方と山間部にワーキングホリデーで長期滞在される方では、懸念される感染症も異なってきます。また、感染症に罹患した場合の医療機関へのアクセスも異なってくるために注意が必要です。

 さらに、長期滞在の場合は特にですが、海外渡航後にその他の諸外国への旅行などで違う地域への渡航がされる場合があります。それがたとえ短期滞在であっても、外来でその可能性を考慮して相談していただければ幸いです。

よくあるケースとして、米国への渡航だけれども、中米や南米への渡航を検討されている方がいらっしゃいます。その地域では、黄熱病という病気の予防接種が必須となっている地域もあるために相談が必要です。 

・ワクチン接種歴

母子手帳をお持ちになられる方は是非診察室に持参していただければと思います。過去にどのようなワクチンを、何回接種しているのか、ワクチン接種の計画を立てていく上で重要な情報となります。その接種回数を考慮して、追加での接種が必要なのかどうか判断することができるからです。母子手帳のみですと、子供の頃に打ったワクチンしか記載されていないことがあります。もし大人になってから接種したワクチンに関して、記録されている方は是非その情報もお伝えいただければ幸いです。

 日本で生まれ育つと、定期接種というものに多くの方が参加して、大人になっておられます。したがって、年齢を確認することによって、その方の幼少期、どのワクチンが定期接種と大多数の方が接種していたのか私たち感染症専門医は可能です。

しかし、中には推奨されたワクチンをその通りに接種を何らかの事情でできなかった方もいらっしゃいます。また、中には母子手帳もなく、病気を患ったかどうか把握できていない方もいます。相談にはなりますが、抗体(感染をした、あるいは、ワクチン接種の効果を判定する指標)を測定してみるということが選択肢としてあがります。

採血によって、各感染症の抗体(麻疹・風疹・ムンプス・水痘・A型肝炎・B型肝炎など)把握することができます。抗体がなければ、追加接種が必要になります。抗体がたとえあっても少ない、つまり、効果が十分ではないという状況でもワクチン接種が必要となります。そのため、抗体を測定せずに、ワクチンを打ってしまうというのももちろん選択肢になるため、適宜相談をしながら決めていきましょう。

 

なお、当院では、接種後の記録を簡単ではございますが、メモとしてお渡ししております。子供の頃のワクチンの情報は母子手帳で大切に保管されていることが多いですが、大人になるとその管理がルーズになりがちです。大切に保管いただき、また次の渡航の際のご相談時にお役立ていただければ幸いです。  

最後に

「海外に行く」「海外に行くかもしれない」となったら、迷わず当院に一度ご相談ください。今日ブログで示した情報を把握するのも時間がかかることもあります。私も海外で病気に罹患したことがありますが、英語や日本語が通じない状況で病院を受診するのは、想像以上に大変でしたし、不安を覚えました。幸い重大な病気ではありませんでしたが、ワクチン接種をして予防できる病気はどれも大変な病気です。

 

そんな状況に陥らないように

「ワクチン接種の計画はお早めに!」

The following two tabs change content below.
KARADA内科クリニック渋谷 院長 【資格】医学博士、日本感染症学会専門医、日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医、日本内科学会認定総合内科専門医、日本医師会認定産業医、臨床研修指導医(厚生労働省) 東京だけではなく、北海道のオーホーツク海を目の前にしながらも総合内科医としてその地域に根ざした診療に従事してきた。また、内科の専門として感染症専門医としてもこれまで一般的な感染症診療のみならず、ワクチン接種や性感染症やHIV感染症などの診療にも取り組んできた。 また、研究者として、医療現場の日常に潜む倫理的な課題にも向き合いながら学会や論文で発信を続けている。

最新記事 by 田中 雅之 (全て見る)