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公開:2023.05.17 /
更新:2023.06.14
医療情報

はしか(麻疹)について知っておきたいこと

KARADA内科クリニック総院長、感染症専門医・指導医の佐藤です。

インドから帰国され、はしか(麻疹)を発症された方から、はしかの感染拡大が日本国内からみられています。同じ新幹線の車両に乗っていた方に感染が拡がっています。

詳細はこちら: 茨城県感染症情報センター

「同じ車両に乗っていただけで」感染してしまう、これが”はしか”の恐ろしい所です。

コロナで「新幹線は換気ばっちりです」と言われていましたが、はしかのような感染力の強い空気感染するウイルスには不十分ということでしょう。これは新幹線の換気が悪いと言いたいわけではなく、それほどはしかの感染力が強いということです。

はしか(麻疹)の感染経路

はしかは、飛沫感染、接触感染、空気感染の3パターンすべてで感染リスクがあります。特にこの空気感染がもっとも恐ろしく、「同じ新幹線の車両に乗っていただけで」や過去には「同じコンサート会場にいた」、「同じスーパーに行った」、「同じ病院の待合室にいた」だけで感染が拡大します。

普通のマスク(いわゆる不織布マスク)では空気感染は予防できません。

感染症基本再生産数集団免疫率(%)
はしか(麻疹)16-2190-95
ムンプス11-1485-90
風疹7-980-85
水痘8-1090
ポリオ5-780-86
天然痘5-780-85
百日咳16-2190-95
インフルエンザ2-350-67
基本再生産数:免疫を持たない集団に感染者一人で何人うつすか
集団免疫率:感染の拡大阻止に必要な免疫保持者の割合

この表を見ていただければわかる通り、はしかは1人の感染者が16~21人にうつしてしまうほどの感染力があり、およそインフルエンザの10倍です。さらに、感染拡大を防ぐには、90-95%の人が免疫を持っておかなければならないとされています。

はしか(麻疹)の症状

まず、感染してから大体10日間(5~21日間)の潜伏期(感染はしているものの症状がでない時期)があります。症状の出る2日前から計11日間程度、人へうつす危険性があります。
まず熱や咳、鼻水、のどの痛みなどの風邪のような症状で発症します。2-3日熱が続いた後に、少しよくなったと思った頃に、39℃以上の高熱と発疹が出現します(二峰性)。
発症後7日から10日で多くの方は快方にむかいます。発疹も痕を残さず治ることがほとんどです。

はしか(麻疹)の合併症

はしかは様々な合併症がみられ、死に至ることもあります。これがはしかの恐ろしいポイントです。合併症として最も多いのは肺炎で、重症化すると人工呼吸器が必要となり入院となることもあり、最悪の場合は死亡してしまいます。もう一つ死亡の原因として多い合併症に脳炎があります。1000人に1人程度ですが、この二つの合併症がはしかで死亡原因のトップ2となっています。
また、10万人に1人と数としては少ないですが、はしかにかかってから約10年後に、知能障害や運動障害が出現し、徐々に進行し、発症から平均6~9ヶ月で死亡に至る亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を発症することもあります。

はしか(麻疹)のワクチン

はしかの予防にはワクチンがとても有効です。1回の接種で約95%の方で抗体が陽転化、つまりワクチンの効果がみられます。よりその効果を確実なものにするため、2回接種が推奨されており、2回目は1回目から1か月後に接種をします。ワクチン接種後2週間程度で抗体ができてきます。

ワクチン接種が不要な人

  • 過去に感染したことがある人:はしかは一度感染すると再感染はほぼなく、抗体を持ち続けることができます(終生免疫)。
  • 幼少期から今までに、2回ワクチンを接種している人:はしか単独ワクチンでも、MRワクチン(はしかと風疹の混合ワクチン)でも、MMRワクチン(はしか、風疹、ムンプスの混合ワクチン)でも生涯に2回接種していれば追加接種は不要です。抗体価の測定も必須ではありません。

ワクチン接種が必要な人

感染歴がない、もしくは、これまで1回もうっていない、もしくは1回しかうっていない人

ワクチン接種歴が分からない人

  • 母子手帳をお持ちの方:KARADA内科クリニックでは、母子手帳を確認させていただき、何回ワクチン接種をしているか見させていただき、ワクチンが必要かどうかの判断もさせていただきます。
  • 子手帳がない方: ①抗体価を測定し、抗体価がなければワクチン接種をする ②ワクチン接種をする

過去に自分が何回ワクチンを接種しているかの参考になるのが「生まれた年」です。

  • 1972年(昭和47年)9月30日以前に生まれた方:ワクチンを接種していない可能性が高く、感染歴がはっきりしていなければ2回のワクチン接種をお勧めします
  • 1972年(昭和47年)10月1日~1990年(平成2年)4月1日生まれの方:1回のみ定期接種をしている可能性が高く、追加で1回のワクチン接種をお勧めします
  • 1990年(平成2年)4月2日~2000年(平成12年)4月1日生まれの方:1回のみ定期接種をしている可能性が高く、追加で1回のワクチン接種をお勧めします。ただし、2008年から5年間行われた「特例措置」の対象者であり、その記録があれば追加接種は不要です。
  • 2000年(平成12年)4月2日以降に生まれた方:2回の定期接種を受けている可能性が高いです。2回の接種記録がなければ接種を推奨いたします。

当院でのワクチン接種に関して

当院では”はしか(麻疹)”のワクチンを接種頂く事が可能です。

国内でははしかの単独ワクチンが供給不足となっており、当院でもはしかと風疹の混合ワクチンでの接種を行っております。風疹の抗体価がある方が接種を行っても、問題はありません。

以上のように、はしかは感染力が大変強く、その合併症による死亡があることからも大変恐ろしい病気です。唯一といってよい予防法は、ワクチン接種となります。生涯で2回だけ接種しておけばよいワクチンですので、この機会に是非接種をご検討ください。

資料参考:国立感染症研究所感染情報センター 平成20年度感染症危機管理研究会プログラム4資料 「わが国におけるプレパンデミックワクチンの開発の現状と臨床研究」

はしか(麻疹)ワクチンについて良くある質問

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KARADA内科クリニック院長。医学博士。日本感染症学会専門医・指導医。 総合診療医として全身の幅広い診療と、感染症専門医としてHIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、集中治療、院内感染対策、ワクチン診療などに従事。 「東京都感染症マニュアル2018」や「感染症クイック・リファレンス」などの作成に携わる。 東京医科大学病院感染症科医局長や東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長などを歴任し、現職に至る。 ●日本テレビ スッキリに感染症専門家として毎週出演していた他、世界一受けたい授業・ザ!世界仰天ニュースなど出演多数 ●Yahoo!ニュース公式コメンテーター

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