コロナのワクチンに関して、感染症専門医の佐藤昭裕院長が解説します。
KARADA内科クリニックの院長の佐藤昭裕です。
ここ最近のニュースで、「新型コロナウイルスワクチン(コミナティ)を接種後にアナフィラキシーの症状がでた」という報道が多く見られます。
日本では10日までに14万8900人あまりが接種を受けていて、アナフィラキシーの報告が25例となっています。
この数字は欧米と比べて「多い」ということです。
アメリカのデータでは100万回あたり11.1例とされていたのが、日本ではおおよそ100万回あたり167例ということになります。
なぜここまで差がでてしまったのでしょうか?
「欧米人と日本人では体格が違うから、量の問題では?」、「日本人にはあわないのでは?」など様々な意見がとびかっています。
しかし、これは「報告基準の違い」によるものです。
海外では、「ブライトン分類」というアナフィラキシーの分類があります。
でた症状や血圧や脈拍数などのバイタルサインからその重症度を分類するものです。
レベル1~5まで分かれており、
といった具合です。
その基準を満たすための症状は、皮膚・粘膜所見や循環器・呼吸器・消化器系の症状から構成されています。
日本ではアナフィラキシーガイドラインというものが日本アレルギー学会よりだされています。
→資料はこちら
これまで日本国内で報告されたアナフィラキシーの例は、厚生労働省のホームページから閲覧することが出来ます。
→資料はこちら
こちらをみると、前述のブライトン分類でレベル4or5に相当しそうなもの、つまり「アナフィラキシーではない、もしくは判定不能」というケースが多く含まれていそうです。
詳しくは厚生労働省のHPを参考にしてください。
厚労省は幅広くワクチン接種後の有害事象を集め、その情報の解析と、国民への周知を方針としています。
今は「とにかくワクチン接種後の変わったことを何でも報告してくれ」という状態で、その報告が本当にアナフィラキシーかどうかは複数の専門家のもと判断される、ということであり現状は「欧米に比べてアナフィラキシーが多いかは不明」というところだと思います。
情報公開は非常に重要ですが、最初のこういった報道だけではなく、「これが本当はどうだったのか」というところまでしっかり報道するように期待したいところです。
そしてもう一点重要なのは、全症例で回復をしているということです。
アナフィラキシーショックは確かに命にかかわることがある大変な状態ですが、今回のワクチン接種後に起きてしまったアナフィラキシーでは適切な処置により全例回復をしています。
ペニシリンなどの抗菌薬や、ロキソニンなどの解熱薬などとも比べても、その頻度は非常に少ないと言えます。
ワクチンの効果と安全性は、期待していたよりもはるかに高いものであり、このコロナ禍におけるゲームチェンジャーとなる可能性は非常に高いと感じています。
早くひとりでも多くの方に安定して供給されることを期待しましょう。