KARADA内科クリニック院長の佐藤昭裕です。
7月11日に、「感染症専門医が普段やっている 感染症自衛マニュアル」という私の著書が発売になります。
新型コロナウイルス感染症が再び流行の兆しを見せている今、ワクチンや治療薬が確立されない間の新しい生活様式等の感染対策はしばらく継続する必要があります。
新宿や池袋の「夜の街」で感染が拡がっていようが、経路不明者が増えようが、一人一人のできる感染対策は変わりがありません。
それは感染流行期に自分の身を守る「自衛」であり、日々の生活で実際にはどのように過ごせばいいのかをできるだけわかりやすく「マニュアル」という形でまとめました。
本書のまえがきをここでご紹介しおきたいと思います。
新型コロナウイルスだけでなく、まだ見ぬ新たな感染症が我々人類を襲ったときにも、自衛の基礎となるようこの本をご利用いただければと思います。
2019年末から2020年にかけ起こった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、人類史に間違いなく記録される「歴史に残る感染症」になってしまいました。これまで人類の歴史は感染症との闘いでもあり、その闘いに勝利したときには人類は大きな進歩を遂げてきました。
1340年代にヨーロッパで大流行したペストは、全世界で7000万人の命を奪いましたが、その終わりにルネサンスという大きな文明・文化的変化が起こりました。
今まさに、そのような転換期を私たちは生きており、これからどのような社会に変化していくかを見守っているのだと思います。
しかし、その闘いの最中は、決して楽なものではなく、目に見えないウイルスからどのように身を守るのか、万が一感染してしまったときにはどのような症状が出て、どのような治療をすればよいのか、数えきれない不安を抱えながら、なるべく普段と変わらない日常を送らなければなりません。
過去のペストやスペイン風邪のような世界的大流行と、今回の新型コロナウイルス感染症を取り巻く環境の大きな違いは、「インターネットの有無」だと思います。
迅速な正確な情報の拡散はもちろん、フェイクニュースやデマもあっという間に拡がりました。
それにより何の意味もない予防法や、検査法についての不確かな推奨、候補予防・治療薬についての誤った認識などが、ただでさえ恐ろしい感染症を、数倍に、いや数十倍恐ろしい存在に変えてしまいました。
「誰も知らない新しい感染症」の専門家は存在しません。
しかし感染症専門医は、過去の事例を通じ、今回の新型コロナウイルス感染症にも応用できる感染予防策を知っています。
免疫が下がっている方や、命の危険性がある方が入院している「病院」という場所は、我々が普段生活をしている「市中・市井」に比べ、少しでも他者への感染リスクを下げる必要があるところです。
この対策を「院内感染対策」と呼び、病院では感染症専門医が中心となり、全医療スタッフが実践している感染予防策です。
そのような予防策を普段の生活にも取り入れることで、新型コロナウイルス感染症の予防に繋がるのではないか、そんな想いをこめて、この本を執筆いたしました。
院内感染対策は病院内で培われてきた「感染症から自分の身を守る方法」と「他者へ感染を拡げない方法」の二本立てで構成されます。
日常生活にそれをどのように適応させればよいのかを一番に考え、新型コロナウイルス感染症はもちろん、インフルエンザや風邪など身近な感染症に対しても適用できる、これからずっと使える、できるだけ具体的かつ実践的な「感染症予防マニュアル」としました。
新型コロナウイルス対策として手洗い、マスク装着、ソーシャルディスタンス、3密を避ける、など様々な対策を一人一人が実践した結果、2019年末までは過去最大規模の流行になると思われていたインフルエンザが、2020年に入ってからパッタリと収まりました。感染症学的にも最も有効だったインフルエンザ対策と言っても過言ではないでしょう。
感染対策の根幹は揺るぐことはなく、基本は今後も変わりません。
この手洗いなどを文化とし、来るべき”new normal”な時代が、ほんの僅かでも感染症の脅威から遠い時代になることを切に願います。
KARADA内科クリニック院長 佐藤昭裕