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公開:2026.02.25 医療情報

帯状疱疹ワクチンが「認知症予防」にも効く? 最新研究が示す驚きの事実 

こんにちは。KARADA内科クリニック福岡天神院長・感染症専門医の沖中です。 

帯状疱疹(たいじょうほうしん)ワクチンといえば、「ピリピリと痛い皮膚の病気を防ぐためのもの」ですよね。もちろんそれは大正解です。 

しかし今、医学界でこのワクチンが大きな注目を集めています。なんと、「帯状疱疹ワクチンの接種が、将来の認知症リスクを下げるかもしれない」という驚きのデータが、世界中から次々と報告されているのです。 

本日は、感染症専門医の視点から、この「脳を守るかもしれない」ワクチンの最新情報について分かりやすく解説します。 

そもそも帯状疱疹とは?(なぜワクチンが必要?) 

帯状疱疹は、子どもの頃にかかった「水ぼうそう」のウイルスが原因です。 水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内の神経にひっそりと隠れ続けています。そして、加齢や疲労、ストレスなどで免疫力が落ちた時に、再び暴れ出して発症します。 

  • 50歳を過ぎると発症率が急上昇します。 
  • 80歳までに約3人に1人が経験すると言われています。 

一番恐ろしいのは、皮膚の症状が治った後も、数か月から数年にわたって刺すような激しい痛みが続く「帯状疱疹後神経痛(PHN)」です。この激痛や重症化を防ぐための強力な武器が「帯状疱疹ワクチン」です。 

日本で使える2つのワクチン 

現在、日本では2種類のワクチンが選べます。 

特徴 不活化ワクチン(シングリックス®) 生ワクチン(ビケン®) 
接種回数 2回(2か月以上の間隔) 1回 
発症予防効果 非常に高い(臨床試験で約97%) 中程度(臨床試験で約51%) 
痛みの予防効果 非常に高い(臨床試験で約91%) 中程度(臨床試験で約67%) 
効果の持続 10年以上 年数とともに低下(8年で小さくなる) 
主な副反応 腕の痛み(70%以上)、だるさ等 注射部位の赤み(30%以上) 

効果の高さと長持ちすることから、世界的にも「不活化ワクチン(シングリックス)」が推奨されることが多いです。ただし、費用面や「1回で済ませたい」という方には生ワクチンも選択肢になります。 

なぜ「皮膚の病気」のワクチンが「脳」を守るの? 

ここからが本題です。なぜ帯状疱疹ワクチンが認知症予防につながるのでしょうか? 現在、主に2つの理由が考えられています。 

  • 理由①:ウイルスの「小さな火種」から脳を守る 
    体内に潜むウイルスが繰り返し暴れようとすると、気づかないうちに神経や脳に小さな「炎症(火種)」を起こします。これが認知症の原因となるゴミ(異常タンパク質)を溜めやすくすると考えられています。ワクチンでウイルスをぐっと押さえ込むことで、脳へのダメージを防げるというわけです。 
  • 理由②:免疫反応の強化が関与する可能性? 
    不活化ワクチン(シングリックス)に含まれる、アジュバント(免疫をパワーアップさせる成分)が、認知症の原因となる脳のゴミのお掃除を助けてくれるのではないか、と世界中の研究者が注目しています。 

世界の研究で分かってきた「ワクチンのすごい力」 

ここ数年で、世界的に有名な医学雑誌(Nature誌など)に、次々と驚きのデータが発表されています。難しい話は抜きにして、要点だけをご紹介します。なお、海外研究の一部はZostavax(海外の生ワクチン)で、日本の生ワクチンとは製剤が異なります。 

  1. 追跡期間中の認知症診断が、接種者で少ない傾向が報告された 
    イギリスやアメリカの数十万人規模の調査で、接種者は非接種者より、追跡期間中の認知症診断が少ない関連が報告されています(米国の後ろ向き観察研究でaHR 0.49。平均追跡期間は接種群約3.4年、非接種群約1.8年)。
  2. すでに認知症の方の「進行」も遅らせるかも? 
    予防だけでなく、すでに認知症を患っている方がワクチンを打つと、認知症の経過(重症化や死亡などのアウトカム)に差が出た可能性を示す報告もあります。 
  3. 不活化ワクチン(シングリックス)の方がより期待大 
    効果を比較した調査では、1回打ちの生ワクチンよりも、2回打ちのシングリックスの方が「認知症と診断されるまでの期間」をより長く引き延ばしたと報告されています。 

※これらのデータはまだ「観察研究」という段階であり、医学的に100%確定した因果関係とまでは言えませんが、複数の国・異なる研究デザインで同方向の結果が報告されている点は非常にポジティブなニュースです。 

感染症専門医としてのホンネ 

ここまで最新研究をご紹介してきましたが、感染症専門医としての私のホンネをお伝えします。現時点では、「認知症予防のため『だけ』に帯状疱疹ワクチンを打ちましょう」とまでは言えません。しかし、この話の最大のポイントは、「認知症予防は、超豪華な”おまけ”である」ということです。 

帯状疱疹ワクチン(特にシングリックス)は、本来の目的である「帯状疱疹の発症」や「恐ろしい後遺症の激痛」を90%以上も防いでくれる、大変優秀なワクチンです。これだけでも、50歳以上の方には自信を持っておすすめできます。 

その「本来のメリット」をしっかり得ながら、将来の認知症リスクまで下げてくれる『かもしれない』という大きなボーナスがついてくる。そう考えると、対象年齢の方がワクチン接種を前向きに検討する理由は、以前にも増して強くなっていると私は考えています。 

2025年4月から定期接種(公費助成)がスタート 

2025年4月から、帯状疱疹ワクチンが、国が定める「定期接種」となり、対象年齢の方は費用の一部が助成されるようになりました。 

【定期接種の対象となる方】 

  • 令和7年度中に 65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳以上 になる方 
  • ※65歳以外の方は、今後5年間だけの特例措置です。このタイミングを逃すと公費助成が受けられなくなるため、お早めにご検討ください。対象外の年でも任意接種(自費)は可能です。 

【50歳〜64歳の方へ(任意接種)】 定期接種の対象外でも、自治体によっては独自の費用助成を行っている場合があります。ぜひお住まいの市区町村のホームページをご確認ください。 

KARADA内科クリニック全院(福岡天神・五反田・渋谷・中野)で接種が可能です。どちらのワクチンにするか迷われている方も、医師がご相談に乗ります。 

よくある質問(Q&A) 

Q. シングリックスと生ワクチン、どちらを選ぶべき? 
A. 効果の高さや長持ち度を考えると、当院では原則として「シングリックス」をおすすめしています。特に70歳以上の方は生ワクチンの効果が落ちやすいためです。ただ、費用を抑えたい方などには生ワクチンも選択肢になりますので、診察時にご相談ください。 

Q. すでに帯状疱疹にかかったことがあるけど、打つ必要はある? 
A. はい、必要です。帯状疱疹は一度かかっても再発します。痛い思いを二度としないために、ぜひ接種をご検討ください。 

Q. 副反応が心配です…。 
A. 特にシングリックスは、打った場所の痛みや、翌日のだるさ・熱などが出やすい傾向があります。これは「免疫がしっかり作られている証拠」でもあり、数日で自然に治まりますのでご安心ください。 

まとめ:ワクチン接種は「体」と「脳」を守る未来への投資 

帯状疱疹ワクチンは、激しい痛みから私たちの体を守る「強固な盾」です。そして最新研究により、認知症予防という「脳を守る力」も秘めている可能性が見えてきました。認知症予防の効果については今後のさらなる研究が待たれますが、帯状疱疹とPHNの予防だけでも十分にワクチン接種の価値があります。認知症予防という「嬉しい副産物」の可能性が加わったことは、50歳以上のすべての方にとって、接種を前向きに検討する大きな理由になるのではないでしょうか。年齢を重ねても、自分らしく健やかな毎日を送るために。 ぜひ一度、お近くのKARADA内科クリニック(福岡天神・五反田・渋谷・中野)でお気軽にご相談ください。 

参考文献 

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KARADA内科クリニック院長。医学博士。日本感染症学会専門医・指導医。 総合診療医として全身の幅広い診療と、感染症専門医としてHIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、集中治療、院内感染対策、ワクチン診療などに従事。 「東京都感染症マニュアル2018」や「感染症クイック・リファレンス」などの作成に携わる。 東京医科大学病院感染症科医局長や東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長などを歴任し、現職に至る。 ●日本テレビ スッキリに感染症専門家として毎週出演していた他、世界一受けたい授業・ザ!世界仰天ニュースなど出演多数 ●Yahoo!ニュース公式コメンテーター

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