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公開:2025.07.17 医療情報

高齢者向け高用量インフルエンザワクチン「エフルエルダ®」とは?

2025年、サノフィ株式会社から新しいインフルエンザワクチン「エフルエルダ」が発売されました。これは、60歳以上の高齢者に向けて開発された“高用量”のインフルエンザワクチンです。

高齢者は、年齢とともに免疫の働きが弱くなる「免疫老化(めんえきろうか)」が進みます。
そのため、従来のインフルエンザワクチンでは十分な効果が得られにくいことが課題とされてきました。

そんな中で登場したのが「エフルエルダ®」です。
従来より多くのウイルス成分(抗原)を含んでおり、高齢者でもしっかり免疫がつくよう設計されています。

ここでは、エフルエルダの特徴やメリット、注意点について詳しく解説していきます。

エフルエルダの特徴とこれまでのワクチンとの違い

エフルエルダは、既存のインフルエンザワクチンといくつかの点で異なります。特に注目すべきは「抗原量」と「対象年齢」です。従来のインフルエンザワクチンでは、1つのウイルス型につき15μg(マイクログラム)の抗原が含まれています。


一方で、エフルエルダはその約4倍、60μgもの抗原量を含んでいます。これにより、高齢者でも強い免疫応答(病気を防ぐ力)が得られるようになりました。
アメリカなどでは、すでに10年以上も前から高齢者向けの高用量ワクチンが使用されており、「入院や死亡のリスクを減らす」という研究報告も多くあります。エフルエルダもその流れをくむ製品で、日本でもようやく導入されたことは大きな意義があります。

また、エフルエルダは60歳以上の方に限定して使われるワクチンです。これは、若年層には高用量である必要がないためです。

高齢者にとってのメリットと期待される効果

高齢者はインフルエンザにかかると重症化しやすく、肺炎や心不全などを引き起こすことがあります。
そのため、予防接種はとても重要な手段です。

しかし、通常のワクチンでは加齢によって免疫の反応が弱くなり、「打っても効かなかった」と感じる方も少なくありません。

エフルエルダは、その点を補うために開発されたワクチンです。従来よりも強い免疫反応を引き出すことで、発症や重症化を防ぐ効果が期待されています。

実際に、海外の臨床試験では次のような効果が確認されています。

高用量ワクチンは、通常ワクチンと比べて下記の通りリスクを軽減させました。

  • インフルエンザ様症状の発症を15.9%
  • インフルエンザに関連する肺炎による入院を13.4%
  • 入院リスクを17.9%

これはとても心強いデータであり、高齢者にとっては非常に意義深い進歩といえます。

エフルエルダの副反応と接種時の注意点

ワクチンと聞くと、副反応(ふくはんのう)が心配な方も多いかと思います。エフルエルダにも、他のワクチンと同様にいくつかの副反応があります。

主なものは以下の通りです。

  • 注射した場所の腫れや痛み
  • 倦怠感(けんたいかん:だるさ)
  • 頭痛、発熱

これらは一時的なもので、多くは1〜2日で自然に改善します。

費用・接種方法

KARADA内科クリニックでの接種費用は未定です。接種開始時期も現段階では未定です。

なお、65歳以上の方が利用できる自治体の助成(じょせい:費用の一部負担)については、エフルエルダが適応になるかはまだ決まっていません。接種前に、お住まいの自治体に確認しておくとよいでしょう。

おわりに

エフルエルダの導入は、高齢者の命を守る一歩です
エフルエルダの登場によって、日本でも高齢者に対するインフルエンザ予防が大きく前進しました。
「これまでのワクチンでは効かなかった」と感じていた方にこそ、選択肢として知ってほしいワクチンです。

65歳以上の方やご家族の方は、是非当院にご相談いただき、
今年のインフルエンザ予防にぜひエフルエルダを検討してみてください。

引用・参考文献
サノフィ株式会社「エフルエルダ水性懸濁注シリンジ」製品情報

DiazGranados CA, et al. “Efficacy of High-Dose versus Standard-Dose Influenza Vaccine in Older Adults.” N Engl J Med 2014; 371:635–645.

CDC(米国疾病予防管理センター)「High-Dose Seasonal Influenza Vaccine」

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KARADA内科クリニック院長。医学博士。日本感染症学会専門医・指導医。 総合診療医として全身の幅広い診療と、感染症専門医としてHIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、集中治療、院内感染対策、ワクチン診療などに従事。 「東京都感染症マニュアル2018」や「感染症クイック・リファレンス」などの作成に携わる。 東京医科大学病院感染症科医局長や東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長などを歴任し、現職に至る。 ●日本テレビ スッキリに感染症専門家として毎週出演していた他、世界一受けたい授業・ザ!世界仰天ニュースなど出演多数 ●Yahoo!ニュース公式コメンテーター

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