2025年7月14日に日本テレビ系列DayDay. でスタジオ解説した内容をもとに夏型過敏性肺炎について解説いたします。
それ、実は「夏型過敏性肺炎」という病気かもしれません。
今回は感染症専門医の立場から、夏型過敏性肺炎の原因や症状、検査・治療法、そして予防策までをわかりやすく解説します。
「夏型過敏性肺炎(なつがたかびんせいはいえん)」は、家の中に繁殖したカビを吸い込むことで起こる肺の炎症です。
とくに「トリコスポロン」というカビが原因として知られています。
このカビは、押し入れや畳、布団などの湿った場所に多く発生します。
寝室で一晩中この胞子を吸ってしまうと、肺がアレルギー反応を起こしてしまうのです。
夏型過敏性肺炎は、アレルギーと感染症の間のような病気で、風邪や喘息と間違われやすい点も特徴です。
この病気の主な症状は「咳(せき)が長引くこと」です。
特に朝起きたときに咳が強く出るのが特徴です。
それは、夜間ずっと寝室のカビを吸い続けているからです。
37度台の微熱が続いたり、体がだるい、息苦しいといった症状も見られます。
旅行などで家を離れると症状が軽くなり、戻るとまた悪化するのも、この病気のサインです。
咳喘息との違いは、夏型過敏性肺炎では「胸のレントゲンやCTに異常が出ることがある」点や、
「原因となるカビを取り除かないと何度も再発する」といった点にあります。
医療機関では、以下のような検査が行われます。
「家を離れたら症状がよくなる」という経過自体も、診断のヒントになります。
治療の柱は、「原因を取り除く」ことと「炎症を抑える薬」の2つです。
家の中にいると再発するため、住環境の見直しが最も重要です。
以下のような対策をおすすめします。
「寝具のすぐ近くにカビがある」という意識を持つことが大切です。
肺に強い炎症が起きている場合は、「ステロイド(副腎皮質ホルモン)」という飲み薬で治療を行います。
これにより咳や息苦しさが改善しますが、カビが残っていれば再発するため、薬だけに頼るのはNGです。
「ただの夏風邪かな」「喘息が出たかな」と軽く考えて放置していると、
肺の炎症が慢性化して、肺が硬くなってしまう「線維化」という状態になることがあります。
そうなると元に戻すことが難しくなり、息切れが続いたり、酸素が必要になるケースもあるため、
早期の診断と対処が非常に大切です。
夏型過敏性肺炎は、生活環境が原因となる病気です。
家のカビを吸い込むことで、肺に炎症が起こるという、知られざるリスクが潜んでいます。
毎年夏になると咳が出る人、特に朝の咳が強い方、家にいると悪化する方は、
一度「夏型過敏性肺炎」の可能性を考えてみてください。
掃除や除湿など、自分でできる対策も多く、早めに気づけば改善も可能です。
気になる場合は、内科や呼吸器科に相談してみましょう。
【参考文献・出典元】
日本呼吸器学会「過敏性肺炎診療ガイドライン」