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公開:2025.07.15 医療情報

夏風邪と間違いやすい“夏型過敏性肺炎”とは?症状・検査・治療まとめ

2025年7月14日に日本テレビ系列DayDay. でスタジオ解説した内容をもとに夏型過敏性肺炎について解説いたします。

夏になると咳が長引いて困っている方はいませんか?

それ、実は「夏型過敏性肺炎」という病気かもしれません。
今回は感染症専門医の立場から、夏型過敏性肺炎の原因や症状、検査・治療法、そして予防策までをわかりやすく解説します。

【夏に咳が続く…その原因は「家のカビ」かもしれません】

「夏型過敏性肺炎(なつがたかびんせいはいえん)」は、家の中に繁殖したカビを吸い込むことで起こる肺の炎症です。
とくに「トリコスポロン」というカビが原因として知られています。

このカビは、押し入れや畳、布団などの湿った場所に多く発生します。
寝室で一晩中この胞子を吸ってしまうと、肺がアレルギー反応を起こしてしまうのです。

夏型過敏性肺炎は、アレルギーと感染症の間のような病気で、風邪や喘息と間違われやすい点も特徴です。

夏型過敏性肺炎の症状と、咳喘息との違い

この病気の主な症状は「咳(せき)が長引くこと」です。
特に朝起きたときに咳が強く出るのが特徴です。
それは、夜間ずっと寝室のカビを吸い続けているからです。

37度台の微熱が続いたり、体がだるい、息苦しいといった症状も見られます。
旅行などで家を離れると症状が軽くなり、戻るとまた悪化するのも、この病気のサインです。

咳喘息との違いは、夏型過敏性肺炎では「胸のレントゲンやCTに異常が出ることがある」点や、
「原因となるカビを取り除かないと何度も再発する」といった点にあります。

検査と診断の流れ:何でわかるの?

医療機関では、以下のような検査が行われます。

  • 胸部X線・CT検査:肺に炎症の影(すりガラス様陰影など)があるかを確認します。
  • 血液検査:トリコスポロンに対する抗体(特異的IgG)が陽性になることがあります。
  • 喀痰検査(かくたんけんさ):たんの中にカビがいるかを確認することもあります。

「家を離れたら症状がよくなる」という経過自体も、診断のヒントになります。

夏型過敏性肺炎の治療と再発予防

治療の柱は、「原因を取り除く」ことと「炎症を抑える薬」の2つです。

環境改善(原因除去)

家の中にいると再発するため、住環境の見直しが最も重要です。
以下のような対策をおすすめします。

  • 押し入れや畳の掃除、布団やマットレスの乾燥:週2〜3回
  • 除湿機やエアコンの除湿機能で湿度を50〜60%に保つ:常時
  • エアコンのフィルター掃除:月1回、内部洗浄は年1回
  • 換気:朝晩1日2回以上、30分程度

「寝具のすぐ近くにカビがある」という意識を持つことが大切です。

薬物療法(ステロイド)

肺に強い炎症が起きている場合は、「ステロイド(副腎皮質ホルモン)」という飲み薬で治療を行います。
これにより咳や息苦しさが改善しますが、カビが残っていれば再発するため、薬だけに頼るのはNGです。

放置するとどうなる?慢性化・線維化のリスクも

「ただの夏風邪かな」「喘息が出たかな」と軽く考えて放置していると、
肺の炎症が慢性化して、肺が硬くなってしまう「線維化」という状態になることがあります。

そうなると元に戻すことが難しくなり、息切れが続いたり、酸素が必要になるケースもあるため、
早期の診断と対処が非常に大切です。

まとめ:毎年夏に咳が出る人は、一度「家のカビ」を疑ってみましょう

夏型過敏性肺炎は、生活環境が原因となる病気です。
家のカビを吸い込むことで、肺に炎症が起こるという、知られざるリスクが潜んでいます。

毎年夏になると咳が出る人、特に朝の咳が強い方、家にいると悪化する方は、
一度「夏型過敏性肺炎」の可能性を考えてみてください。

掃除や除湿など、自分でできる対策も多く、早めに気づけば改善も可能です。
気になる場合は、内科や呼吸器科に相談してみましょう。

【参考文献・出典元】
日本呼吸器学会「過敏性肺炎診療ガイドライン」

国立感染症研究所「過敏性肺炎に関する疫学情報」

国立環境研究所「住環境と健康 被害との関係」

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KARADA内科クリニック院長。医学博士。日本感染症学会専門医・指導医。 総合診療医として全身の幅広い診療と、感染症専門医としてHIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、集中治療、院内感染対策、ワクチン診療などに従事。 「東京都感染症マニュアル2018」や「感染症クイック・リファレンス」などの作成に携わる。 東京医科大学病院感染症科医局長や東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長などを歴任し、現職に至る。 ●日本テレビ スッキリに感染症専門家として毎週出演していた他、世界一受けたい授業・ザ!世界仰天ニュースなど出演多数 ●Yahoo!ニュース公式コメンテーター

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