A型肝炎とは、A型肝炎ウイルスによる一過性の感染症です。感染症法では4類に分類されています。
世界中で報告される感染症ですが、特に衛生状態が悪く飲用水の管理が悪い地域でのリスクが高くなります。水や食べ物から感染するため、完全に防ぐことが難しいため、渡航前のワクチンによる感染対策をお薦めしております。特にサハラ以南アフリカ、南アジアで罹患リスクが高いです。B型やC型肝炎と比べると慢性化することは稀です。
ウイルスに感染し、2~7週間の潜伏期間の後に、急な発熱、全身のだるさ、食欲不振、吐き気や嘔吐が見られ、数日後には黄疸(眼球結膜という目の白い部分が黄色くなること)が現れます。潜伏期間が長いので、注意深く問診しながら感染の機会(渡航歴など)を聴取して診断に繋げます。
成人は小児よりも所見や症状が現れやすく、高齢者では重症度と死亡率が高くなります。全年代通しての致死率は0.3%程度とされ。若年者では概ね予後良好です。50歳以上では劇症肝炎など合併症の頻度が高く、致死率が1.8-5.4%と上昇することもあります。ただし、日本では60歳以上の人の多くが免疫抗体を持っています。親子孫の3代でみれば、40代の父親のリスクが高いと言われております。
感染した場合には、症状の発現前と症状の消失後にも、数週間はウイルスを排泄しますので、他人に感染させないように注意しましょう。
渡航歴などに加えて、急性発症の発熱に黄疸・肝機能障害を認める場合に、A型肝炎を疑います。血液検査が診断には有用であり、血中HAV-IgM抗体というものを測定します。発症2週間以内は10%程度の症例で偽陰性となりうるので、初回検査が陰性でも疑いが残る場合、1-2週間後の再検が勧められます。
特別な治療法はありません。症状に応じて治療し、安静にして抗体ができることを待ちます。症状が強く、お見受けする限り非常に辛そうですので、是非積極的な予防をご検討ください。