花粉症の季節を思い浮かべ、「いよいよ」「またこの季節かと」と戦々恐々と憂鬱に思われている方もいらっしゃるかと思います。今日は、毎年花粉症に悩まされている皆様に今年は少しでも楽にこの季節を乗り切る情報をお届けします。また、今年の花粉飛散情報も合わせてご報告させてください。
そもそも花粉症という言葉は、「季節性アレルギー性鼻炎」と医学用語にすると言い換えることができます。季節性という言葉の通り、季節によって花粉の量が異なります。従って、1年中、一定の症状で季節性のアレルギー性鼻炎で苦しむということはありません。患者さん自身が反応するアレルギーの原因となる花粉の種類の飛散が多い時期に、それぞれ症状が強く出るでしょう。また、これはお住まいの地域によっても差が出てくるわけです。
花粉症ってどのくらいの方が日本にいらっしゃると思いますか?その数なんと、2人に1人!と言われております。日本にいらっしゃる半数の方が、アレルギー性鼻炎という病気を患っていると推測されております。最近よくお見かけするのは、海外から日本にいらして数年が経過した外国人の方です。花粉症の症状が出現し、クリニックにいらっしゃいます。日本は花粉の量がとても多く、季節性アレルギー性鼻炎を患いやすいのでしょう。
いずれにせよ、来たる花粉症シーズンは目の前であり、日本に在住する多くの方が対策をとる必要があるタイミングが迫っていると言えます。
ただ、1月後半のこのタイミングで花粉症のお話をすると、「え、花粉って4-5月くらいのイメージですよ?まだ先でしょう?」「まだ治療は早いよ!気が早いよ、先生」と声をかけられてしまうこともあります。ただ、改めて強調したいのは、もう治療の開始を検討しても良い段階(1月下旬)になっているということです。なぜなら、花粉飛散初期あるいは症状が出始め時期から投薬することでそのシーズン通して症状が軽く済むからです。1)既に今シーズン、外来でもアレルギー症状の相談を受け始めており、今まさに治療の開始をすべき‘時が来る‘状況にあると思います。この機を逃さずに、より快適な花粉症シーズンを過ごせるとよろしいのではないでしょうか。
2023年1月19日に発表されたスギ花粉の飛散情報では、東京は2月11日の飛散開始が予想されておりました。ただし、前述したように既に花粉症症状を訴えて、クリニックを受診されている方もいらっしゃいます。スギ花粉は、まだ飛散開始時期には至っていなくても、気温が上がると、花粉は飛散する可能性が十分にあるため、今後も寒暖差に注意しながら、花粉症の方は早め早めの対策をしていきましょう。
Tenki.jpなどのインターネットサイト上の情報を参考にさせていただきましたが、ズバリ東京では、例年と比して非常に多い、昨年と比しても非常に多い花粉の飛散が予想されております。昨シーズンそれほど症状を感じていなかった方も今年は辛いシーズンとなる可能性があります。今年の花粉、侮れません。私たち医療者は植物の専門家ではないため、花粉の飛散量の予測に関しては詳しくありませんが、昨年夏の気象条件をもとに算出しているようです。この予測は、毎年発表されておりますが、臨床的に診療現場でもよく反映されていると実感するところでもあります。これらの情報をもとに対策を実施していくことは価値のあることと医師としても感じます。ぜひ参考にしてみてください。
3月にはスギの花粉、4月にはヒノキの花粉の飛散がピークを迎えるでしょう。花粉大国の日本において花粉症の方は大変辛いシーズンを迎えます。医療機関として少しでもお力になれるように取り組んで参ります。
薬物の治療に関するポイントを紹介して参ります。
前述の通り、花粉飛散初期あるいは症状が出始め時期から投薬することでそのシーズン通して症状が軽く済みます。症状が少しでもあるとなれば、できるだけ早めにクリニックを受診ください。
花粉症の症状は、代表的なものとして4種類あります。皮膚や喉の痒み/鼻汁やくしゃみ/鼻閉/目の痒みです。それぞれの症状に対して、使用が推奨される治療薬やアプローチが異なります。漫然と内服薬にたより、症状が良くならずにいる方も散見されます。改めて、症状を確認させていただき、治療の提案をさせていただければと思いますので、遠慮なく診察室内でお声かけください。
花粉症の代表的な4種類の症状に対して、4種類の治療薬を紹介したいと思います。それぞれの症状に合わせて、治療薬を使用することで症状が改善することでしょう。花粉症の診療において、この辺りの症状の特徴を十分に皆様から診察室内で伺うことが重要と考えております。
内服薬、特に抗ヒスタミン薬と言われる薬を多くの方がこれまで試されているかと思います。ただし、この抗ヒスタミン薬は、古いものから新しいものまで、そして、内服の回数の違いや薬物の構造の違いなど多種多様です。症状や生活の事情に合わせて処方の提案がなされるべきであると考えます。抗ヒスタミン薬は、即効性を感じることができうる治療薬の一つです。1日1回内服のタイプでも十分効果があり、お勧めできます。これまで使用してきた内服薬が、適切な処方なのかどうか、今一度外来で見直してみましょう。
また、基本的には目の症状には特に効果がないことがわかっております。後述する点眼薬の活用を検討ください。
さらに、副作用として眠気が有名ですが、第二世代と言われる抗ヒスタミン薬がお勧めです。お勧めした第二世代抗ヒスタミン薬の中で眠気の副作用に関して注意すべき種類を紹介させていただければと思います。
下記の表の通り、一部の内服薬は、運転や危険作業などへの従事は不可(橙色の薬)、一部は注意を要する(緑色の薬)とされております。自身の生活の状況を踏まえて、この辺りも治療の選択の際に、相談の上に積雪な処方薬のご提案をさせていただければと思います。
また、過去に治療をされていた方で、薬の効果をあまり実感できず症状に悩まされている方もいらっしゃるかと思います。その場合には、薬の構造の異なる内服薬への選択によって治療効果を実感することもあります。
同じ第二世代抗ヒスタミン薬といえども、作用機序が異なる薬が複数あります。表にある通り選択肢も多様であるため、変更によって治療効果をより体感される方も多いです。治療経過も踏まえてKARADA内科クリニックの外来で是非ご相談ください。
鼻の粘膜の局所に投与するステロイド薬です。鼻の症状には他の薬剤よりも高い効果があり2)、一部眼の症状にも効果があるとされています3)。1日に1回の投与で済むタイプがあり、お勧めです。市販でも販売されておりますが、それには血管収縮薬というものが含まれているために注意が必要です。妊婦さんにも使用が可能とされています。アラミストやナゾネックスという商品がありますが、これらは2歳からの小児も使用することができます。
あまり聞きなれない薬かもしれません。花粉症の症状としてよく遭遇する鼻閉や夜間の症状に効果があるとされています4)5) 。効果は比較的ゆっくりで、即効性はあまり期待できません。気管支喘息にも適応があるため、咳症状を伴う方にはお勧めです。このタイプの薬がメインで使われることは少ないですが、補助的に使われることが多い薬です。
コンタクト装着者や小児にも使用することが可能な「アレジオン点眼LX」は大変重宝している花粉症の目の症状に対しての治療薬です。アレジオンやパタノール点眼といった薬もあります。いずれも、目の症状には効果がある治療薬かと思います。過去に使用経験のない方は治療の選択肢としてお考えください。
また、できることなら、花粉症のシーズンはコンタクトレンズを外すことを推奨いたします。
いずれにせよ、花粉飛散初期あるいは症状が出始め時期から投薬することでそのシーズン通して症状が軽く済むと言われております。機を逃さずに治療を開始しましょう。
そもそも春になると、「毎年鼻水が多いけども、花粉症ではなくこの時期に風邪を引いているだけなのでは?」など、自分が本当に花粉症なのかどうかはっきりしないことにヤキモキされている方もいらっしゃると思います。花粉症診断のための一助として、血液検査があります。これは、スギやヒノキの花粉のみならず、食品や動物などへのアレルギーも判明することができる検査です。確実な診断がなされていない方、この際よろしければ、血液検査を実施して自身のアレルギー症状の原因を特定してみてはいかがでしょうか?保険診療で行うと、およそ6,000円程度になるかと思います。
「もう花粉症はこりごりです、なんとか根本的に治療したいです」と言った、根本的な治療を希望される方も出てくると思います。毎年春目前になりそのような要望を訴える方も多いです。
スギ花粉による花粉症をお持ちの患者さんには根本的な治療が存在します。舌下免疫療法という治療方法です。KARADA内科クリニックでも実施することができます。ただし、スギ花粉に対する舌下免疫療法はスギ花粉が飛んでいる時期は治療を新たに開始することができません。花粉の飛んでいる時期は、スギに対する体の反応性が過敏になっているためです。そのため、原則として、花粉が飛散していない時期に開始した方が良いとされております。夏以降に再度根本的な治療である舌下免疫療法のご相談いただければと思います。この春は前述のように様々な治療薬を武器に少しでも花粉で皆様の日常生活に支障が起きぬようにお支えできればと考えております。
例年以上の花粉の飛散が予想され、飛散を目前に迫った今、まさに治療の開始どきであると思います。KARADA内科クリニックの外来にて、皆様と診断治療のご相談の上、花粉症治療に御協力できればと願っております。