KARADA内科クリニック渋谷院長の田中です。
まず初めに、新型コロナウィルス感染をした患者さんにコロナ感染後のワクチンは慌てて接種なさらなくて良いです、という事をお伝えしたいです。
ただし、再感染予防のためにはたとえ感染後であっても、今後のワクチンの追加接種を検討しましょう。厚生労働省は感染から3ヶ月(かつ2回目接種から6ヶ月以上)を目安としております。
外来よくお受けるするご質問として、
「来週ワクチンの予約があるのですが、もし検査陽性だったらどうしましょうか?」
「療養期間を終えて調子良くなったのですが、私ってワクチンどうすればよいでしょうか?」
「濃厚接触者と保健所から連絡きましたが、ワクチンは見送った方が良いですか?」
といったご質問を多く頂きますが、今日現在厚生労働省からは
“一度、新型コロナウィルスに感染したとしても、ワクチンを打つことができます”
という見解が公開されております。
これだけでは不安かと思いますので、皆さんのご不安に対する答えを整理していきたいと思います。(最後に、当院での実施している抗体検査の活用法もご紹介いたします。)
以下、患者さんからのご質問と私ども答えの一例です。
そんなことはありません。各国で方針は様々ですが、米国にあるCDCという組織も過去に感染があっても接種を推奨しております。
厚労省も次の表の通り、各国の過去の新型コロナウィルス感染者へのワクチン接種への考えをまとめて、共有しております。ただし、これはあくまでも接種の対象から除外しない、つまり、打ってはいけませんとは言っていないというものであり、具体的にどのくらい感染から間隔をあけて接種すべきなど根拠を持って回答する事が難しいです。
*第21回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会より抜粋「既感染者への接種について」
(2022年3月追記)
新型コロナウィルスは何度でも感染することが、分かってきました。実際に診療していても、昨年8月に感染し、再度クリニックを受診され今年2月に再度新型コロナ感染を発症している方を何人も拝見しました。
海外の報告では、すでに新型コロナの流行が始まって2年以上が経っていますが、3回・4回と感染している方がいることが報告されております。
そのため、過去にたとえ感染した人であっても、長期的に抗体が保たれて感染しないわけでは決してありません。過去に新型コロナウィルスに感染した人も今後の感染対策として、ワクチン接種・追加接種に関して知識を整理しておく必要があると思います。
一度感染するよりも、ワクチン接種した方が十分抗体(感染を予防できる血液の成分)がつくと報告があります。(N Engl J Med. 2021 Apr 8;384(14):1372-1374. )先に示した通り、基本的には2回の接種が当初推奨されていました。
(2022年3月追記)
一方で、新型コロナに感染すると、6-9ヶ月間、8割近く新型コロナの感染リスクを下げることが分かっておりました。 (Lancet. 2021 Mar 27;397(10280):1204-1212.)このように期間は限定的であり、追加接種をしないとコロナの感染リスクが高くなることも指摘されておりました。
加えて、今(2022年3月時点)流行しているオミクロン株への感染という観点ではどうなのか?という点が気になるかと思います。
変異株ではワクチンによる感染予防効果が落ちることが知られていますが、過去の感染による免疫も、変異株に対しては再感染を防ぐ効果が落ちることが分かっています。特に、このオミクロン株は過去に例え新型コロナに感染した人も感染しやすいとのことです。(N Engl J Med. 2022 Feb 9;NEJMc2200133.)
また詳しい方は、オミクロン株にB A.1とB A2という系統があるのをご存知かもしれません。ただし、系統は似ていてもどちらにも感染することがあったと報告されております。
したがって、日本での流行もこれから後者に移る可能性があることが懸念されている今、前者に感染した後、後者にどの程度感染するのかはよくわかっておりません。ただし、一度オミクロン株に感染した人も再度系統の異なるオミクロン株への再感染の懸念は拭えません。予防の目的という観点では、やはり体調やご自身のスケジュール(翌日予定がない・お休みなど)に余裕を持った中で接種することが求められるかと思います。
現状では、2回の接種が推奨されております。確かに一度感染すると十分抗体を獲得できると考える方もいらっしゃるかと思いますが、現時点での推奨はあくまでも2回接種です。1回の接種で十分ということを保証する根拠はまだ乏しいです。
(2022年3月追記)
2022年3月時点、多くの方が3回目の接種を検討されていると思います。感染後の1・2回目接種と同様に、たとえ過去に感染したとしても原則3回目接種は十分な抗体を獲得するためには重要と考えられております。
過去に新型コロナに感染した人がワクチン接種をした場合、ワクチン接種をしていない人と比べて再感染を減らし、感染後1年以上たってもワクチン接種後6ヶ月以上経過しても効果が維持されたという報告もあります。ただし、オミクロン株に関するデータに基づく話では残念ながらありませんので、今後のデータ解析に基づく見解にも注目していきましょう。
重症度によって抗体の獲得量が異なるという報告があります。軽症者は重症者に比べて抗体の量が低いという報告があります。(Sci Rep 11(1):2608, 2021. )やはり先に示した通り、たとえ罹患したとしても接種は推奨されるものかと思います。
初めの感染から、少なくとも90日程度は感染の報告が出てないようです。(COVID-19 reinfection tracker)
デンマークの報告ですが、初回の感染が再感染を防ぐ効果を検証する研究があります。ここでは、感染したことがない人よりも感染するリスクが5分の1になる程度と報告されております。(Lancet. 2021 Mar 27;397(10280):1204-1212.)このように少なくとも新型コロナに罹患したばかりの方々は、感染していない人よりかはワクチンを近々で接種することより促進しなくても良さそうであると言えそうです。
1回目の接種、2回目の接種、3回目の接種を問わず、まさに新型コロナウィルスに感染が発覚したばかりの人、あるいは、濃厚接触者となっている人は、予約を延期しましょう。
隔離が必要となる時期には接種ができません。たとえ無症状であっても接種することはできません。体調の面だけではなく、公共の場所に行けないという観点からも外出ができず、人が集う会場まで行くことを控えるべきでしょう。接種側の気持ちからすると、キャンセルや延期をできるだけ早く連絡を入れていただきたいところです。よろしくお願いします。
とてもよくいただく質問ですが、残念ながらこれに明確に答えられる科学的根拠は特にありません。
ただし、厚生労働省は、感染してから追加接種までの間隔について、暫定的に3か月を一つの目安にすることとされました。
日本感染症学会から出されたCOVID−19ワクチンに関する提言では、“回復後の早期接種が望まれます”と記載されております。副反応が高頻度に出る、あるいは、ある程度の期間再感染を懸念しなくても良さそうという報告から考えるに、あくまでも私見ですが、感染後体調不良続いている方、後遺症で悩まれている方が接種を急ぐ必要はないのかと思います。あくまでも回復後、接種の予約をされると良いのかと考えます。
次のQuestionにもある通り、コロナ感染後のワクチン接種は非感染の方に比して副反応も高頻度に出ることが報告されております。
KARADA内科クリニックでは、「慌てて接種なさらなくて良いですよ」とお伝えしております。
理由は3つあります。一つは感染後であり、抗体が少し上昇しているためすぐに再感染することはないからです。もう一つは副反応が高頻度に出る可能性があります。翌日お休みである・予定がないなどゆとりのあるスケジュールで接種された方が生活への影響が少なくて済むと考えるからです。さらに、自治体にもよると思いますが、少なくとも私たちが診療している東京において、昨年の1・2回目の接種時よりも圧倒的に予約が取りやすい状況にあるからです。渋谷区や品川区での診療において、接種可能な予約枠が埋まることはほとんどありませんでした。
確かにそのような報告があります。(Lancet Infect Dis. 2021 Jul;21(7):939-949.)頻度として高頻度に出る傾向があるようです。その程度、つまり、副反応の強さはこの論文では言及されておりません。
一度も感染していない人に比べて、過去に感染した方は約10倍高い抗体価が獲得されているという報告があります(N Engl J Med 384(14):1372-1374, 2021. doi: )。これはファイザー社のワクチンによる報告です。
上記をまとめると
コロナ感染後のワクチンは慌てて接種なさらなくて良い、ただし、感染後3ヶ月以内に、体調やスケジュールの都合を見ながら次の感染対策として接種の計画を立てていきましょう。
最後に、最近問い合わせが増えている抗体検査について説明したいと思います。
KARADA内科クリニックが提案できる抗体検査は2種類あります。
※定性検査は終了しました
定性検査 | 定量検査 | |
意義 | 抗体の有無を把握 | 抗体の量を把握 |
直近1カ月以内に感染があったかどうかわかる | 繰り返し検査をして、自身の抗体の量の変化を確認できる | |
評価項目 | IgMとIgG | IgGのみ |
時間 | 15分程度 | 3日間 |
検査方法 | 採血(少量)で確認。 | |
値段 | 7,700円(税込) | |
検査結果報告 | その日のうちに診察室で報告 | 再診あるいはアプリで報告 |
解釈上の注意 |
抗体が陽性、抗体量が〇〇以上だと、再感染しない or ワクチンの追加接種の必要はない、という根拠はまだ十分なデータがないため提示できません。解釈には注意が必要な自費診療の検査となります。 |
定性検査(抗体の有無を確認)と定量検査(抗体の量を測定する)という検査の用意があります。これらの検査は、あくまでも自費の検査です。保険診療では実施しておりません。加えて、どの程度抗体があれば新型コロナウィルスへの感染を予防できる、重症化できるというような根拠を提示することにつながる十分なデータはまだ世の中にありません。
そのため、抗体量の結果を見て、「で?私はワクチン打った方が良いのか?」「コロナに感染しないのか?」というような質問への回答になるわけではありません。
ただし、「ワクチンを接種する前に、実はあの時の風邪症状は新型コロナウィルスによるものだったのか?」「過去に感染したが非常に軽症だったので、本当に抗体があるのかどうか?」「3ヶ月前に抗体の量を測定したが、今どのくらい減ってしまったのか?」というような疑問には少し役立てられるのではないかと思っております。