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感染性腸炎

記事執筆者

KARADA内科クリニック 五反田院

院長 佐藤 昭裕

KARADA内科クリニック 五反田院

院長 佐藤 昭裕

総合診療医として全身の幅広い診療と、感染症専門医としてHIV感染症や結核、マラリアなどの診療に加え、集中治療、院内感染対策、ワクチン診療などに従事。性感染症(性病検査)も専門とする。
「東京都感染症マニュアル2018」や「感染症クイック・リファレンス」などの作成に携わる。

東京医科大学病院感染症科医局長や東京医科大学茨城医療センター感染制御部部長、感染症科科長などを歴任し、現職に至る。

-著書『感染症専門医が普段やっている 感染症自衛マニュアル』
●日本テレビ スッキリに感染症専門家として毎週出演していた他、世界一受けたい授業・ザ!世界仰天ニュースなど出演多数
●Yahoo!ニュース公式コメンテーター

認定資格
  • 医学博士
  • 日本感染症学会専門医・指導医
  • 日本内科学会認定医
  • 日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
  • 日本感染症学会推薦 ICD(Infection control doctor)
  • 日本エイズ学会認定医
  • 日本医師会認定産業医
  • 臨床研修指導医(厚生労働省)
  • 身体障害者福祉法指定医(免疫機能障害)

「胃腸炎」という言葉をよく耳にしますが、胃と腸が同時に炎症を起こすということはあまりありません。胃腸炎という言葉を皆様がおっしゃる時のほとんどが、下痢や嘔吐が主症状にクリニックを受診されます。この場合の多くは、「感染性腸炎」という病気を患っていることが多いです。

感染性腸炎とは、微生物が原因となって惹き起こされる腸管病変を主体とした疾患群の総称です。原因となる微生物には細菌、ウイルス、原虫、寄生虫などがあります。これらの微生物が腸の粘膜に入り込んだり、表面で毒素を産生することによって症状を起こします。 感染経路には次のようなものがあります。    

  1. 食品や水を介するもの
  2. ヒトからヒトへ接触感染するもの
  3. ペットなどの動物から感染するもの

原因の菌として多いのは、細菌性とウィルス性です。

まず細菌性で代表的な菌には、サルモネラやキャンピロバクターと呼ばれる菌があります。夏に多いとも言われております。サルモネラは食中毒で最も多い原因菌で、加熱が不十分な鶏肉・生卵などから感染することがあります。カンピロバクターは食中毒の原因菌であり、頭痛や血便の症状あるいは発熱を伴うこともあります。

腸炎ビブリオ病原性大腸菌群のO-157など様々な種類の菌が腸炎を引き起こし原因菌として知られております。 次にウィルス性としては、ノロウィルス、ロタウイルス・アデノウイルスなどがあります。こちらは逆に冬に多いと言われております。

代表的なノロウィルスについて説明します。ノロウイルスは手指や食品などを介して、経口で感染し、ヒトの腸管で増殖し、おう吐、下痢、腹痛などを起こします。ノロウイルスは感染力が強く、10~100個という少量でも感染すると考えられています。生牡蠣の摂取で感染することも有名です。健康な方は軽症で回復しますが、子どもやお年寄りなどでは重症化したりすることがあります。ワクチンがなく、また、治療は輸液などの対症療法に限られます。嘔吐と下痢の症状がひどいものの、半日〜1日で症状が改善する方も多いです。

症状別あるいは菌別に特徴を列挙しておきます。

血便をきたす感染性腸炎はほとんどが細菌性腸炎です。血便の頻度が高いのは腸管出血性大腸菌腸炎とカンピロバクター腸炎である。ついでサルモネラ腸炎、チフス・パラチフス、細菌性赤痢などです。 高熱を伴う激しい水様便の場合にはサルモネラ腸炎、カンピロバクター腸炎、ロタウイルス腸炎、などを考えます。 腸管出血性大腸菌腸炎では発熱は軽度かみられないことが多いです。また、腹痛は激しいことがあり、虫垂炎(盲腸)と間違われることがあります。 腸管出血性大腸菌腸炎では発熱は軽度かみられないことが多いです。また、腹痛は激しいことがあり、虫垂炎(盲腸)と間違われることがあります。

エルシニア腸炎は、腹痛と発熱が主な症状で、下痢は軽度かみられないことが多いです。腹痛は激しいことが多く虫垂炎と間違われることがあります。 チフス・パラチフスは発熱が主な症状であり、重症例もあります。下痢は必ずしもみられません。渡航歴が重要な参考資料になるために腸炎の診察の中の問診で伺います。 ロタウイルス腸炎は乳幼児に多く、発熱、下痢、嘔吐などがみられる。白色便が特徴であります。大人では珍しいです。

【症状】

 症状は、発熱・腹痛・吐き気・嘔吐・下痢が主なものです。特に乳幼児や高齢者では、脱水症状(皮膚の張りがなくなり、口唇の周りが乾くなど)に注意が必要です。細菌性腸炎の場合、発熱や腹痛や血便をきたすことが教科書的には知られております。ただし、ウィルス性腸炎でも同様の症状をきたすこともあります。

したがって、症状だけでは原因菌を確定することができません。ただし、症状を聴取することは診断のためにも大切であり、受診の際には問診へのご協力いただければ幸いです。 渡航先や周囲の感染状況も重要な情報になることがあります。こちらも教えていただければ幸いです。

【診断・検査】

皆さまへ病気の経過や症状を詳細に伺うことで、病歴を医師が把握し、感染性腸炎の診断に繋げてまいります。ただし、原因菌あるいはウィルスは、これまで述べてきている通り、症状のみでは原因菌を特定することはできません。

【治療】

感染性腸炎は一般的には自然治癒傾向が強いため、治療の原則は対症療法になります。抗菌薬は必要ないことが多いですし、重症でなければ、あるいは原因菌(抗菌薬は赤痢、コレラ、チフス・パラチフスなどの3類感染症では必ず投与します)によっては、抗菌薬を処方しないことが適切な診療と言えるでしょう。整腸剤の内服を処方させていただきます。

嘔吐や嘔気が強ければ制吐剤を使用させていただきます。さらに、脱水があり飲水が可能な方には、経口補水液(OS-1など)をご購入いただけるようにご準備させていただきます。脱水の程度が重症、状態が悪い患者様には近隣の医療機関での入院加療など検討させていただき、KARADA内科クリニックより高度医療機関をご紹介させていただくことがあります。

また、下痢止めや鎮痙薬は腸管内容物の停滞時間を延長し、毒素の吸収を助長する可能性があり原則的には使用しません。

【予防】

感染性腸炎は、病原微生物によって汚れた手指との接触や食品や水の飲食により感染することが多いです。 予防の基本は手洗いになります。誰かが下痢をしていて、頻回にトイレ通いをしていれば、大量の病原体が便の中に排泄されています。

家族の中にこのようなヒトがいて手洗いが十分でない場合には、菌に触れた手を介して様々なものに菌が伝播して、それを触った他の人の手に付着し、そこから食事をしたりすることで感染が広がっていく可能性を考えます。また、感染者が使用したトイレ自体にも大量の細菌やウィルスが浮遊していることもありえます。

よくみられるのは子どもが下痢していておむつを替えた親に感染するケースや家族全員に徐々に感染が伝播するケースです。ノロウイルスには アルコール(エタノール・イソプロパノール)では効果がなく、塩素系の消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)が効果があるとされています。次亜塩素酸ナトリウムは食器や床、トイレなどの消毒には使用できますが、手指など人体に使用すると手荒れを引き起こす可能性がありますので、注意が必要です。もちろん飲んだりしてもいけません。  食品や水を介する感染は食中毒に対する注意を守ることによって危険を少なくすることができます。

「病原体を付けない、増やさない、殺す」が食中毒予防の三原則です。特に夏場は菌が増殖しやすいので、健康なヒトでも生肉や生魚などの生ものには注意しましょう。冬には気温が低いので食中毒がないと思いがちですが、冬には冬の食中毒があります。 COVID-19(新型コロナウイルス)の影響で多くの方が頻繁な手洗いや適切な手洗いを実行していただいておりますが、食品などを介して一定の確率で食品を介した感染性腸炎が発生するでしょう。

私たちが日常できることは適宜行っていただきながら、もし腸炎を疑うような状況になった場合には、KARADA内科クリニックを予約していただき受診いただければ幸いです。


監修:KARADA内科クリニック医師 田中雅之

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